■なぜ「異世界」なのか
そもそも、「恋愛もの」はなぜ異世界が多いのか。それは「現実じゃない」からです。そう、読者は「現実ではない世界」を求めているんです。
「小説家になろう」などでは、「異世界恋愛」ジャンルにおいて、現実が想起される様な生々しいことを書くと読者からクレームにも近い文句が来て、読者離れが起こるらしいですよ。つまり皆さん、作品に没頭して現実を忘れて仮想的に恋愛を楽しみたいんです。これは分かる気がしますね。なんかこう趣味の話をして盛り上がってるのに、いきなり仕事のことを話題にされると急激に萎えるあの感じでしょうか。
ちょっと脱線してコロナ禍前の話ですが、在宅勤務もなくて毎日会社へ通勤していた頃、昼食は社食で取っていましたが、昼はずーっと「一人で食べる」と決めてました。昼休みはゆっくり一人になれる時間なのに、部署の同僚とかと食べに行くとなんだかんだで仕事の話になるんですよね。あと、大人数集まると「どうでもいい話」も聞かされる訳で、もうそれが苦痛で苦痛で。どんなシチュエーションでも「楽しみたい」「ゆっくりしたい」時に現実(この場合は仕事)に引き戻されることは苦痛なんですよ。
「小説家になろう」は特にそうらしいですが、読者は「ストレスを嫌う」傾向にあるらしいです。読むことによって「快感だけ」を得たいし、そう言う作品をブックマークする。そうやって大多数の読者が好きな作品が洗練されていって、「異世界」「主人公最強」などのテンプレートが出来上がったんですね。人気ジャンルがハイファンタジーが異世界恋愛に変わっても、その傾向は変わっていないですよね。ハイファンタジーの場合は主人公が無双してスカッとし、異世界恋愛の場合は「ざまぁ」などでスカッとする。こう考えると現在の「Web小説」とは、作者が書きたいことを書くものではなく、読者が喜ぶものを絶えず供給し続けるものだと良く分かります。商業的に考えてもそっちの方が儲かりますから、今の流れは敏感な読者層を上手く捉えた出版社の戦略勝ちですね。ビジネスモデルとしては非常に洗練されてますし。
話を戻して「恋愛もの」について、上記の流れを考えれば現代を舞台にした純粋な恋愛小説は、とてもハードルが高いですね。書ける人は凄い! 現代を舞台にしてしまうと、現実を想起させる描写は多かれ少なかれ入りますから、Web小説を楽しむ様な層に対しては圧倒的に不利になると考えられます。その点異世界は、極論すれば自分で世界を作ってしまえるので嫌な(性格の悪い、謂わば悪役的な)上官や貴族も登場させやすい。そう言った相手は主人公に倒されたり、「ざまぁ」されて「スッキリする要素」に変えてしまえば良いわけですから。
そこに主人公とお相手の恋愛描写を足していって、読者のドキドキやハラハラ体験を提供していく訳なので、逆にそう言った恋愛に関する描写がクローズアップされる気もしますが……それを簡単に補うのが「エロ」表現なのかも知れません。
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