■過程(プロセス)は不要か

 最近異世界もののアニメとかを見ていて思うんですが、第一話の冒頭は主人公を中心にハーレム状態の未来描写から入るものが結構あるんですよね。あれは「ツカミ」なのかもしれません。「小説家になろう」やカクヨムの様に読者が作品を評価するシステムの場合、その作品の一話目、もっと言えばタイトルやキャッチコピーで読者の心を掴むのは非常に重要なそうです。多分、タイトルがやたらに長くなったのもこの影響なんでしょう。つまり、タイトルを読めば大体の内容が分かって、読者が「自分の好きなジャンルの物語かどうかすぐに判断できる」と。うーむ、昔の火曜サスペンス(2時間ドラマ)みたいなノリだなあ。


 更に一話から読者の心を掴んでブックマークや★を貰うために、でかいイベントや関心の高い内容……「エロ」とからしいですが……を書くのが有効らしいです。「婚約破棄」「追放」「転生」などは、多分「最初に起こって、且つ続きを知りたくなるイベント」としては最適なんでしょうね。


 こうやって書いていると、「テンプレート」なるものが(言葉は悪いですが)如何に読者に阿(おもね)る形で構築されているか分かりますね。しかしこれは悪いことではないと思います。あらゆる業界で起こりうる「商業化・大衆化」の一貫です。音楽でも先駆者が「とても流行る曲」を作った場合、それに追従する形で同じ様な形式の音楽が流行り、そして洗練されて広がっていきますから。流行のライフサイクルから考えれば、実に真っ当な結果です。


 さて、タイトルに戻って「恋愛」のプロセスについてなんですが、「異世界恋愛」については以前にも少し書いた通り、主人公とそのお相手がお互いに惹かれ合うプロセスは省略されがちですよね。女性主人公の場合、その彼女を甘やかすスバダリ的な王子は、出会ってすぐに彼女を見初めて甘やかす。そう言えば「異世界恋愛」ジャンルのタイトルに「甘やかす」とか「溺愛される」って言葉多いのは、「主人公がスパダリに無条件に愛されます」ってことを端的に示すためなのかも。


 ただですね、前述の「推しカプ」論からすると、「恋愛もの」が好きな読者(の一部、かも知れませんが)は、スパダリにデロデロに甘やかされるだけでは物足りないのでは? とも思うんです。スパダリ的な完璧王子ではなく、不器用な二人が徐々に近付いていくプロセスとか、お互いに意識しているけどなかなか上手く行かないもどかしさとか、ドキドキやモヤモヤ……そういった雰囲気や感情も楽しみたいのでは? 特に「推しカプ」を持っている方はキャラに対する思い入れも強いので、そのキャラに対する感情同調率も高いと思うんです。


 小説家として目指す姿にもよると思いますが、現在の商業化の波に乗ってテンプレートに沿ったものを書くのであれば「恋愛のプロセス」はさほど気にする必要はないですが、もっとディープでニッチなところを狙うのであればプロセスは大切にしたいところです。私自身はどちらかと言えばプロセス重視派なので、出会いの部分から発展していってドキドキする様なシチュエーションを書きたいなあ、なんて思いますが(^^;。

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