温泉旅行が当たりました3
首都高から東名に変わるころには音楽は5曲を周り調度たえの好きな曲が流れてきた。
「ねぇ、まこと歌ってよ」
たえの期待に満ちた目で見られると断れないよな。
「しょうがないな」
少し照れながら歌い始める。俺は歌が好きだ。俺は高校までサッカーをしていたのだけど左足を故障してしまい断念。結構荒れた時期もあったのだけど、たえの勧めで軽音部に入り音楽にのめり込んだ。
お陰である程度は自信がある。たえは俺の歌が好きだと言う。俺の歌声の伸びやかなファルセットや歌声の中のゆらぎに凄く癒されるらしい。ここまで誉められて喜ばない訳がない。まぁ熱狂的なファンの為にも一曲行きますか?最近流行りのラブバラードだ。
ハンドルを握ったまま歌声を音楽に合わせる。歌のハモりの部分をたえが一緒に歌ってくれた。たえの優しく可愛らしい声が俺の歌声と重なった。少しゾクッとする様な感覚がする。あぁ、この声が重なる瞬間がとても好きだ。
「たえ主旋変わるぞ俺が合わせる」
たえが嬉しそうに歌い出した。俺は3音下げて音を被せた……。
一曲終わって隣を見るとたえがぽーっとした顔でこちらを見ている。
「まこと反則だよ」
そう言ってたえは赤い顔を両手で隠した。
「へへっ勝ちっ」
とおどけると珍しくたえが「負けっ!!」と降参した。
その後、二人で歌ったり笑ったりベタベタしたり(ここが7割)していると。
二車線で隣に止まっていた車のおっさんが、いきなり自分の車のウインドゥを開け「まったくお前さん達のせいでブラックのコーヒーが甘くなっちまったじゃねぇかどうしてくれる!?」とギャハハと笑いながら走り去って行った。
二人して顔を合わせて吹き出して笑った。
運転中のベタベタは気を付けましょう。
海岸線通りを通る車は意外に多く段々と渋滞を作り始めていた。
「あー混んで来たー」
「この辺の道は海岸線の一本道だから迂回出来ないからな、まぁこいつに頑張って貰うさ」
裏拳でハンドルを軽く叩く。
「だねぇ頑張れコペちゃん!!」
ふぁいとーと可愛らしくパンチポーズをするたえ。
何だそれ、くそ可愛い!!さぁ頼むぜ
伊豆は山と海に囲まれた半島の為坂道が多い。顔には出さなかったがオートマにしておいて本当に良かったと思っていた。坂道発進の連続とか普段、車に馴れていない俺には地獄以外何者でも無いな。
「ねぇ、まこと今日は何処寄るの?」旅館のチェックインはどんなに早くても3時から。
まぁ5時には着いていたいけど、それでも何ヵ所か回りたい。一ヶ所はあそことして帰りに動物園に寄りたいから最初は車の中で運動不足なお姫様におもいっきり遊んで貰おう。
海岸線から緩やかな山道を通り数時間かけてついた場所は自転車の遊園地、伊豆サイクルランドだった。車の中でうとうとしている、たえを起こす。
「うにゃあ着いた?」
時々どんな夢を見ていたのか聞いてみたくなるがそれはまた今度、
「起きろ眠り姫思い切り遊ぶぞ!!」
「ふぁーい王子様」
たえは膝に抱えていた麦わら帽子を頭にかぶりながら車を出た。
伊豆サイクルランドのウリは大きく分ければ三つ、三輪車や一輪車二人乗り自転車やハンドルを回すと走る自転車などの変わり種自転車に乗れるゾーン本格的な競技用自転車に乗れるゾーン最後は自転車とは関係無く遊べるアスレチックゾーン。
最初は交代で変わり種自転車にのって互いに写真を撮っていたけど段々どうでも良くなり二人で色んな自転車に乗って楽しんだ。
「ねぇまこと、あれ!?どっち食べる?」
名物ワサビソフトとバラソフト?
「普通のソフト」
「えーつまんないよー」
「ワサビソフトとバラソフトひとつずつお願いしまーす」
お前、許可も取らずに……。
そして、たえはもちろんピンクのバラソフトを取る。
「はい、あーん」
付属のプラスチックのスプーンでバラのソフトをすくい俺に差し出してくる。
「あーん」
バラの味というよりはバラの香りが口に広がる。
「うん美味しい」
今度は2つのスプーンでワサビソフトをすくう。
一つをたえに渡す。
「一緒に食べようぜ!!」
「うんっ!!」
互いに互いの口へスプーンを持っていく。
……自分の鼻をつまんで涙目になりながら二人同時に言った。
「「おっ……美味しいね?」」
「美味しいけど鼻に来るね」
「うんっフフッまことの顔!!」
「お二人さん甘過ぎるからワサビサービスしておいたよ!!」
と売店のおばちゃんに言われて大笑い。ソフトの緑が濃いなぁと思ったんだ。俺は舌をだしてニカッ笑った。舌は緑色だったらしい。
後で口直しに何か食べたいな。
自転車で散々遊んでヘトヘトになり、この後もう一ヶ所寄る予定があるんだと思い出す。
「この後また運転かぁ」
さっき買ったコーラ(ノンカロリー)を飲みながらため息をつく。
屋根のあるベンチで二人座ってやすむ。
屋根の構造上だろうか?音が凄く反響しやすい。
たえがアーとかイーとか言って遊んでいる。
「足パンパンだぁー!!」
ベンチに座って手足を伸ばすたえ。
「明日、筋肉痛だよー」
きつそうなのに何となく嬉しそうな顔。
「しゃーないな後でマッサージしてやるよ」
こう見えて俺も元スポーツマン、ストレッチやマッサージの仕方は熟知している。
調度その時、偶然辺りの喧騒とBGMがやみ奇跡的な静けさが出来た。
「そーだねぇ、まこと
音が響く空間で、たえの声が響いた。
ブッ!!思わず飲んでいたコーラを吹く!!
「ゲホッガハッ、ゴホンゴホン!!」
変などごろばいっだ。
周りを見ると俺と目があった人達が皆、目を背けていく。目の前のオッサンがプッと吹き出した。
「ん?大丈夫?どうしたの、まこと?」
「ゴホッ、たえ、お前!!言い方!!」
赤い顔をして咳をする。
咳のせいで俺の顔が赤いのか恥ずかしくて赤いのか解らなかったけれど、俺の咳の意味に気付いて真っ赤になった、たえほどじゃ無かった。
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