温泉旅行が当たりました2

 旅行が決まってから、予想以上に慌ただしい日々が過ぎて行った。


 まぁ、旅行の為の準備と託つけてたえとのデートを楽しんでいた気もするのだが、今は二人で何かをすると言う事が楽しくてしょうが無かった。


 今まで、我慢していた相手に対する想いがデレになって自分が言うのも恥ずかしいけど二人だけの世界を作ってる気もするし、あぁバカップルってこんな感じなんだなって、変に納得してしまった。


 ただ俺達二人を悩ませていたのは恋人同士になりましたってだけでなく、さぁ先の関係に進もうっていうタイミングの取り方だった。


 平たく言えばキス以降をどうするかって話。ぶっちゃけすぎだと思うけど、流石に気にはしている。別に二人とも大人なんだから、責任を持ってヤれば……いやもとい行動すれば良いだけの話なんだけど……恥ずかしいだけなんだよ!!


 伊達に幼馴染みを拗らせていた訳では無いと言う訳で本当に今更感があって……駄目だな処女童貞はって話。


 だからこそ今回の温泉旅行は俺達にとっては都合の良いイベントだった。


 つまり色んな意味で楽しみだし少しドキドキしていた。



 ☆☆☆



 ふふん、やっぱり俺は晴れ男だなと根拠も無く勝ち誇りながら、レンタカーのエンジンを掛けた。



 やっぱり車は見た目で借りてきていて良かったと思う。


 初めてのレンタカーは何故か頭の中で赤いスポーツカー一択だったのだが、レンタカーリースで見掛けたオレンジ色のコペルに一目惚れをして決定してしまった。まるっこいボディーの割にスポーティーな感じで、このタイプはオープンカーにもなる。


 当初はマニュアル車にしたかったのだけどオートマしかなくて妥協した。たえもオートマじゃないといざと言う時に乗れなくて恐いと言う事らしい。俺もたえも自動車の免許は持ってはいるけど、たえはペーパードライバー俺も社用車に乗る位であまり乗れてはいない。


 今は二人とも上京しているが故郷は車が無いと移動にどうしようも無い所だからだ。オレンジ色のコペルをマンションの有料駐車場に止めて、たえを待つ事にした。熱い車の中を冷やす為にエンジンを掛けたままにして、エアコンを入れておく。この日差しだと車内は地獄だもんな。


 駐車場の自動販売機で飲み物でも買って待つか。コールドしか無い自販機で何を飲もうか思案中。自分の分はコーヒーでも……おー!!ドクペだ!!


 コーラとも、ジンジャーエールとも違う癖がある炭酸飲料。見つけるだけでレアな飲み物に少し興奮して即買いをしてしまう、たえの分もと買おうとして危ない所で、あいつが炭酸飲めない事を思い出す。


 ビールはガバガバ行くくせに、と思いつつストレートティーのペットボトルを買う。そして、車の中の氷の入ったクーラーボックスに二本とも入れてたえを待った。初っぱなからドクペとか良い感じだな。昨日は正直少し緊張してあまり眠れなかったからな。


 旅行の支度に今日着る服装。

 彼女とはいえ幼馴染み相手に今さらなんて思いながらも、やっぱり意識してしまう。

 初めての彼女と初めての旅行、初めての旅行で温泉旅行なんてレベル高すぎないか?


 服装だって……そろそろ初夏だし紫外線が強くなり始める時期に黒のパンツに白いシャツに黒のパーカーというパンダか!!と突っ込まれそうな格好に何かオレ大丈夫かな?なんて車のサイドミラーで身なりを整えている。


 関係無いが仕事の準備する為に整えて来ますと言った所『お前は、サウナにでも行くのか!!』と職場の先輩にボケられて最近のサウナブームにイラッとした覚えがある。


「お待たせ、まこと」


「おぉぅ…」


 ヤバいな出てきた瞬間、見とれて変な声が出た。


 白のワンピースにスキニーのデニムかぁスポーティー可愛い。

 ワンピースの上にベージュのポンチョニットを羽織ってて大人可愛い。

「それ……麦わら帽子か?可愛いのな?」

 つば広の大きめな麦わら帽子に白い花がついている麦わら帽子似合いすぎ可愛い。

「うん!!UVカットのストローハット可愛いでしょ?」

 スカートのすそを持って、くるんとその場で回転する。

 ふざけんな可愛い。


「まことは相変わらず……パンダね?」


 ……。


 くるっと、たえを背にして歩き出す。

「……着替えてくる!!」

 気にしてたのにー!!夕陽に向かってダッシュだ!!(午前7時現在)


「もう何怒っているのよー!!」

 パーカーのえりを掴まれてる苦しい首がしまるわ!!

「うっさい俺の気持ちをお前が分かるかー!!」

 くっそー、どーせ俺はパンダさ、タイヤで転がるか、笹食ってるのがお似合いさ!!

「戻って着替えても、どーせパンダの黒が増えるか白が増えるかだけでしょ?」

 そーだけど、そーだけどな!!


「それでも、お前の隣にいるならマトモな格好したいんだよ」

 ちょっとは釣り合いの取れる格好でいたいんだよ。


「青葉まこととアホバカまこと」

「なっお前!!中学高校大学と俺に言っちゃいけない言葉ナンバーワンをー!!全国の青葉さんに謝れー!!」

 怒って振り返る俺に顔面に、ぶつける様に渡される紙袋。

「ぶふぉっ」

「はい、これ」

 渡されたのはぶつけられたのは紙袋。

「何だこれ?」

 たえが胸元に手を合わせて広げるオープンのポーズをとる。

「開けろってか?」

 渡された袋を開くと中に入ってたのは……服?

「ん?何だ?ニットだよね?」

 うん!とうなずくたえ。


「これはー何というかーおしゃれ?」

 俺の言葉に笑う、たえ。

「エヘヘ、ニットのカーディガンだよー。」

 それはベージュを濃くした様な色のニットのカーディガンだった。


「まことがパンダ(白黒ファッション)なのは昔からでしょ?」

 ニコッと笑顔のたえ。


「これ、良いのか?」

 パーカー脱いで着てみる、うわぁ何これ何か雑誌のモデルっぽい。

 色の使い方が上手いな悔しいけど凄く悔しいけど。


 そして気付くニットでベージュかぁ。


「……えーと、オソロだな」

 少しアレンジは違うけどペアルックだな、これ?


「エヘヘうん、まこと格好良い」照れながら人指し指で俺の胸元をグリグリしてくる。


「やめろって……その荷物運ぶか?」

 恥ずかしくなってたえに背中を向けると車に向かう。


 その背中に温かい塊が飛び込んでくる。


 たえが俺の背中を抱き締める。


「……たえ、ありがとな」


「エヘヘでも、あんまり私の前以外で格好良くならないで……」


「素材がこれじゃ大した事無いだろ?」


「素材がこれだからよ馬鹿まこと」


 何を言ってるのか?俺は、ゆっくりとたえを剥がし後ろを振り向き手を差し出す。


「行こう、たえ」


 差し出された手を握って車へと歩き出す。

さぁ、車の中で聞くBGMは何にしよう?たえも気に入ってくれると良いけどな。


 スマホの音楽配信アプリを起動した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る