温泉旅行が当たりました 1
「あおしのー!!何処にいるー?何処だ、あおしのー?どっか隠れて、二人で、やってんじゃねぇよなー?」
何時も五月蝿い友達の声。
「いつも、一緒に呼ぶんじゃねぇ!!」
「そうです!!それにやってるとか言うの、やめてよ!!」
二人で反論して、大騒ぎして……。
「だってさ、青葉と忍野いっつも一緒じゃん、分けて呼ぶのも面倒臭さいしな。て言うかお前ら、いい加減付き合っちゃえよー!!」
結局、最後にはからかわれて、二人して「五月蝿いなー!!」って言うけど、他に何も言えなくて……。
「全く、いつの夢だよ」
夢を見た。
何年も前の甘酸っぱい様な高校時代の夢、
久しぶりに夢に見た。
あおしの……か。
本当にあいつと付き合う事になるとはなぁ。
寝起きのボケた頭と、久しぶりに思い出した言葉に苦笑いしながら、大きなアクビを一つ。
おい、友人達よ喜べ、お前達の思惑通り、青葉まことと忍野たえは付き合う事になったよ。
あの空の向こうで暖かく見守ってくれ。と、死んでもいない友人達に失礼な事を思いながら起きる準備をする。
例の結婚騒ぎから、数週間、俺とたえは何とか恋人関係になる事になった。
幼馴染は沢山のお酒を飲むとその時の記憶を無くしてしまう事があるので、前の日の出来事も忘れているのではとヒヤヒヤしていたのだけど。
実際、朝になったら、すっかり記憶が無かったたえは、俺の部屋で一緒に寝ている自分に大慌てだった。
借りてきた猫の様にベッドの中で大人しくなっていた、たえだったけど。
二度ある事は三度あるでは無いが俺も流石に次同じ事はしたく無かったから昨日の事を説明ついでに三度目の告白をして、やっと晴れて恋人同士になることが出来た。
まぁ、たえ的にはシラフでちゃんと告白が聞けて良かったと言っているけど。俺の前以外で深酒は、絶対に止めろと強く念を押しておく!!本当に怖くて仕方がない。
そんなこんなで、何とか恋人になれた二人だったのだけど、まぁ色々お互いに、四苦八苦しながら頑張っている。
告白した時、涙ぐんでやんの……本当に可愛かった。
恋人と幼馴染みの距離感って似ている様で微妙にちがうんだよな。結局は慣れなんだろうけど。
そんな明くる日、仕事から帰った俺の部屋のレターボックスに一通の封筒を見つける。
『君と歩こう。旅天使』ツブヤイターキャンペーン当選ハガキ?
おー!!あれかぁ大喜びで早速、封筒を開けてみる。
『おめでとうございます!!この度、温泉旅行が当たりました』
大まかに言えばこんな感じ。
実際には可愛い女の子が旅をする系アニメのツブヤイターキャンペーンに当選して高級温泉旅行が当たったらしい。
あぁ、あのアニメ一時期ハマったんだよなーキャラグッズでも当たれば嬉しいなぁ位に考えて応募したんだった。
うわぁ熱海だよ熱海、本当に高額な温泉旅館だ。
一度、激しく興奮して(こりゃあ彼女を連れていって温泉でなぁ、おい!!)なんて、しばらく考えて冷静に考えて見ると、あれこれ誘うの恥ずかしい奴じゃない?
温泉だよ温泉?
いくら幼馴染みだと言っても付き合いたての彼女と温泉旅行って……ハードル高すぎ!!
しかも温泉旅行が当たったって誰が信じるんだよ!?
俺が彼女だったらこう思う。
彼女(仮称たえさん)『えー!!当たったんだ、凄ーい!!』
内心(うわぁ、当たる訳無いよね?自作自演おつ!!色々必死だなぁwww)だろ?
うわぁ、これは恥ずかしい。
夢の国のチケット当たったんだ!!一緒に行かないか?の次、位にあり得ない。
一日迷って、意を決してラインを送ってみる。
一日迷った結果のラインの一声がこう。
オレ『……よう』
ようじゃねぇよ!!
一日程迷って出すラインがこれか?
小学生でも、打てるわ!!
たえ『なぬ?』
なぬ?なぬってなんだ?5分程考える。
たえ『ごめんね!!なに?って送ろうとしたら、なぬって送っちゃった!!間違い間違い、ごめんねー!!』
なんだ間違いか?しかし、めっちゃ謝る、めっちゃ饒舌、送った後のたえの状況を考えたら、かなり慌てたんだろうなと思い笑えた。
ひとしきり笑った後、ラインを送る。
オレ『温泉旅行が当たりました』
たえ『えっ?何?何かのサギ?まことの成り済ましとかじゃないよね?』そっちかぁー、まぁ怪しいよな。
流石に悪いので丁寧にラインを送る。
オレ『その件でお話ししたい事がありますので、電話よろしいですか?』
たえ『えっ?やだ、何?やめて欲しいんですけど。』
えっ?まずい?ヤバいな早く電話して、誤解を解かないと。
オレ『♪~♪~♪~♪』出ない。
オレ『♪~♪~♪~♪』出ない。
オレ『♪~♪~♪~♪』出ない。
オレ『♪~♪~♪~♪』出ない。
この後、数回程鳴らしてやっと出てもらった。
誤解を解くのに五分、謝るのに五分程かかった。
『本当に、いい加減にしてよ!!』
「だから、ゴメンって謝ってるだろ?」
こういう時は、平謝りするしか無い。
『私、怖くて泣きそうになったんだから!?』
たえが言うには、変なラインが俺の名前で来て、温泉旅行が当たりました。
電話させて下さい。
着信✕5、連続着信、もうちょっとで着信拒否にしようと思ったらしい。
丁寧に書いたのになって思ったけど、良く考えて見ると、これは恐いなと思い、もう一度謝っておいた。
「ごめんな、驚かせたみたいで」
『もう、良いよぅ、何なの?温泉旅行が当たったって』
やっと機嫌を治してくれたらしい。
「あぁ、温泉旅行が当たったんだよ、熱海の高級旅館」
『……えー!!当たったんだー!!凄ーい!!』(棒読み)
「…本当に当たったんだからな!!嘘じゃないぞ!!色々必死な感じじゃないからな!!」
この後、必死に説明して、何とか解ってもらえた……と言うか何となく、ウンウン分かってるから良いよ的な感じで言われて非常に憤慨するのだが、泣く泣く説得を諦めた。
『で、いつなの?』
「むー、◯月✕日だよ」
少しムッとしながらも日程を告げる。
本当に当たったんだもん、別に必死じゃないもん。
……いい加減、ちょっとキモいな。
『あー、その日、仕事入ってたわ』
まじか……、急にテンションが下がる。
「そっかぁ悪かった仕事じゃ、しょうがないよな?」
大きくため息をつくと、たえの慌てた声がする。
『ちょ、ちょっと待って、大丈夫!!大丈夫だからね!?』
『別に仕事だからって休みもらえば良いだけだから!!』
「えっ?大丈夫なの?」
『当たり前でしょ?世の中には有給って物があるんだからね?』
有給休暇?そうだよな、まだ一月以上あるんだからな。
「良かったー!!」
俺の嬉しそうな声に、少し照れ臭そうな声がする。
『そんなに、私と温泉旅行行くの楽しみだったんだ……』
「そりゃあ、まぁ……」頬が熱くなっている自覚がある。
『私も楽しみになって来ちゃった』嬉しそうに言うたえに、本当に誘って良かったと思っていた。
『まことが、せっかく旅行用意してくれたんだもん、楽しみ!!』
……だーかーらー。
「本当に、当たったんだからな!!嘘じゃないからな!!」
『うんうん、解ってるからねー』
駄目だー!!解ってくれねー!!
『これから一月、色々買い物とか付き合って貰うからね!?』
「えっ?何の?」
『旅行の準備に決まってるでしょ?着てく服とか色々あるんだから』
嬉しそうに話すたえと、しばらく話した後通話を切った。
告白から、やっとマトモな恋人同士らしい事が出来そうで正直ほっとしていた。
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