第11話 ヒュドラとの激闘!

ウェルに言われた通り僕はSランクダンジョンにやってきた。


「せやっ!」


ザクッ!


「たぁっ!」


ズバッ!


「とうっ?!」


モンスターを倒していく。


冒険者ってたのしー!!!


僕はそう思いながらダンジョンを進んでいたが。


そして3階層までたどり着いて。


「飽きてきた」


モンスターを倒しながら進むということに飽きていた。


進めど進めど変わらない景色。


それに嫌気が刺してスキルに聞く。


「モンスターも変わんない!つまんない!ワンパンチートないの?」


【ありますぜ】


スっ。


僕のスキルがワンパンチートを差し出してきた。


それを実行!


ズバッ!


僕が切りつけるとモンスターは倒れた。


「楽ちん楽ちん♪」


でも


「歩くのに飽きた!」


【冒険者向いてねー……】


「だって考えてもみてくれよ!変わんない景色!変わんないモンスター!これが美少女なら話は変わるけど」


僕はそう言いながら聞く。


「無限ジャンプチートと壁抜けチートないの?」


ピーガガガガ。

機械みたいな音を出して。


スっ。

黙ってコードを差し出してくる。


チート起動!


「ジャンプ」


1回ジャンプして。

2回目ジャンプしようと思ったら


「空気が蹴れた?!」


今までなら絶対に有り得ない話なんだけど空気を蹴っているかのような感覚で僕は2段ジャンプ。


そして3段目4段目。


どんどんとジャンプできる!


「すげぇ!!!!」


ぴょんぴょんぴょーん!


どんどんジャンプしていって天井が迫ってきた。

その天井に触るように僕は手を伸ばしてみた。


スゥーッ。

スキルウィンドウを触ったときみたいに、僕の手は天井をすり抜けた。


「壁抜けチートも効いてる!すごいすごい!」


どんどんジャンプしていった。


【4階層】

【5階層】

【6階層】


僕は階段を無視してひたすら真上にジャンプするだけでダンジョンを攻略していく。


「とうっ!」


やがてたどり着いた10階層。


「あ、危ない?!」


突如聞こえた女の子の声。

後ろをむくと


「うわぁぁああ!!!モンスターの口?!」


ヌプン。


壁抜け!

僕は今登ってきた下の階層に戻っていった。


ソロ〜ッ。

しばらくして僕は床から顔だけを出して10階層の様子を狭間から見る。


「な、生首?!幽霊?!」


さっき僕を注意してくれた声が驚いているようだった。

そちらに目をやると女の子が剣を構えていた。


「失礼な!生首じゃないよ?!」


よいっしょ。

10階層に上がる。


そして先程のモンスターに目を向けた。


「ヒュドラだ!気をつけて!」


そう言われ僕はモンスターに目を向けた。


「やぁぁあぁぁ!!!くらえ!ワンパンチート!」


剣をぶん投げた。


しかし、ヒュドラがバリアを展開してそのバリアに剣が弾かれた。


「ずる!チートだ!そのバリアずるすぎ!」


カッチーン。


君は僕を怒らせてしまった。


「僕のチートを防ぎやがって!許さん!お前とはマトモに戦ってやんないからな!」


ヒュドラのプロパティを開いた。



0x8016CD7C 0x01980028



deleteキーを連打する。


こういう風にデリートした場合の答えを僕は知っている。


「消えろ!」


Enter!


ヒュドラが消えた。


「はい、僕の勝ちー」


スタスタスタ。

ヒュドラのいなくなったフロアを歩いていく。


ヒュドラが守るようにして立っていた扉のノブに手をかける。


「んーーー!!ぐーーー!!」


力いっぱい引いても開かない。


「な、なにをしてくれてるんだ?」


その時一緒のフロアにいた女の子が声をかけてきた。


「ここの鍵はあのヒュドラを倒さないと、もらえないんだぞ?!あぁぁぁぁ、もううう!!!ここまで一週間かかったのにぃぃ!!!あんまりだぁ!」


うわぁぁぁあぁあんと泣き始める女の子。


今のは倒した扱いじゃないってことか。


「んー、ごめんね。ちょっとまっててね」


僕はすり抜けチートで壁に触れてみた。


スゥーッ。

大丈夫、抜けれそうだな。


「ゆ、幽霊?!」

「幽霊じゃないよ」


そう答えて僕は扉の向こうに行く。

反対側から扉を見るとこちらからは鍵がなくても解錠できるようだった。


ガチャッ。


ガタッ。

扉を開けるとそこには女の子の顔。


「開いたよー」

「え?ふえっ?」


僕がそのまま歩いていこうとすると。

ガッと僕の腕を掴んできた。


「どうしたの?」

「い、いや、そのありがとう」


なにかと思えばお礼か。


「別に気にしないでよ」


そう言いながら歩いていって僕はウェルに取ってくるように頼まれていたものを手に取る。


このフロアの奥にある宝箱。

その中には玉が入っていた。


「これかな?ヒュドラの宝玉」


回収が済んだ僕はそれをアイテムポーチにしまった。


それをジーッと見つめてくる女の子。


「そ、その玉を売ってくれないだろうか。どうしても必要なんだ」

「へー。いくら出せるの?」


ジャラジャラ。

皮袋を取りだして、中身を確認してから僕に渡してくる。


「金30くらい、足りないだろうか?」


僕は相場を知らない。

どうしようかと考えていると。


「私はサーシャ。病気の家族のために冒険者をしてるんだ。それで、その宝玉にはどんな病気だって治すっていう効果があるって、どうしても欲しいんだ」


ふぅん。

サーシャ、ねぇ。


「ちょっと待ってね」

「考えてもらえるのか?なら、いくらでも待つさ」


僕は空の宝箱を閉めた。


「なぜ閉めた?」


僕は空の宝箱に【鑑定】を使った。


そして宝箱のプロパティを開く。



0x011FF5A2 0x00000001



下2桁に注目。


中身は何も入っていないのに01となっている、ということは……。


これが開封済みという状態、なのだろうか?


こういうタイプは01か00のどちらかの状態しかない、というのを僕は色んな検証から知っていた。



0x011FF5A2 0x00000000



に変更してEnter。


宝箱を開けると


「え?な、なんで?宝玉、が?ま、マジック?!」


サーシャが僕の横から覗いてくる。


「どうぞ?」


僕は退いて新たに出てきた宝玉を譲る。


「い、いいのか?」

「うん」


サーシャは中から宝玉を取ると宝箱をひっくり返したり隅々まで観察する。


「へへーん。種も仕掛けもございませぬぞ」

「ど、どうやったんだ?ま、まさか?私の知らないところで自分のものを?」


そう聞かれて僕はアイテムポーチから宝玉を取りだした。


「そんなわけないじゃん?これは僕も必要だから、さ」


僕が手放す、それは一番ない選択肢かな。


ウェルのやつに、ダンジョン攻略の証拠として持ち帰れって言われてるし。


「ほ、本当にありがとう」


頭を下げるサーシャ。


「気にしないでよ」


そう答えて僕はダンジョンの壁に手を当ててすり抜けようとしたら


「お礼がしたい。私と来てくれないだろうか?」


そう言って彼女はこの部屋にあった鉱石に手を当てた。


「それは?」

「転移結晶だが知らないのか?ダンジョンの奥から転移できる鉱石なのだが……」

「そんなのあるんだ!へー!すごい!」


そんなもの知らなくて興味が出てきた。

鉱石に近寄る。


僕のチートとか魔法以外にも転移できる手段があるなんて!


「転移結晶を見るのは初めて?変わった人だな。幽霊みたいにすり抜けるのに」

「うん!初めて!」


僕がそう言うと手を取ってくるサーシャ。


ドキッ!

女の人に手を取られることなんてあんまりなかったからドキドキだ!


「転移しようか」


ポワァッ。


(なんだか、フワフワする感じ?)


僕らの体は光に包まれた。

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