第9話 座標を変更してみた

執事がポロってから一週間。

僕は死にものぐるいで色々とチートスキルについて研究していた。


分かったことがある。

これは初めから分かってたことだけど僕のスキルは話せるということ。


そして大抵のチートコードは頼めば教えてくれること。

ちなみにこの入力するだけで使えるチートをシンプルモード、と呼ぶことにした。


(ま、教えてくれないと、僕チートコードなんて分からないしな)


んで、あんまり詳しく教えてくれない種類のものがあった。

それは僕がエディターモードと呼んでいるものだった。


いわゆるデータをいじくる、鑑定スキルを通して実行したりするチート。


これに関しては下手なことが言えんので自分で試してくれ、との話らしい。


(僕もあんまり触りたくないのはこのエディターモードなんだよなぁ)


それで、あんまり触ってこなかったけど、やはり出来ることが多いのもこっちのエディターモードっぽいからできるだけ練習したい、というのはあるけど


ぶっちゃけさ。


エディターモードじゃない方は僕はシンプルモードって呼んでるけどこっちで十分だったりする。


それが分かったことだった。


あとは、このシンプルモードだけど自分自身にしか適応できないコードが多いみたいだ。


例外としていくつかのコードがあるらしいけど。


そんなことを思いながら僕はエイルーンにもらった世界地図を開いた。


そしてリンダリア大陸に目をやる。


【鑑定】


スキルを使うと僕の視界に浮かび上がるリンダリアのデータ。



名前:リンダリア

大陸ナンバー:03



チートスキルと言うくらいだし、このナンバーさえ分かれば僕だけは物理的な距離を無視して転移すること、とかもできたりすると思う。


「座標変更チート使ってみようかな。コードある?」


ジージー。

ガタン。


【座標変更チートです】


0217F7E28 xxxxxxxx



Xだらけだなぁ。


「このXに座標を入力するって感じ?」

【ピンポーン。流石ボス。話が分かるぜ】

「へへへ。初めは頭痛かったけど段々分かってきたよ」


えーっと。

つまり


0217F7E28 03xxxxxx


これで大陸の指定が出来て


「あとのxは緯度と経度ってことでいい?地図通りでいい?」

【いいが、緯度だの経度だの、が分かんのか?ボス。その歳で?】

「うん。だいたいそれくらいしかなくない?」


そう言いながら埋めていく。

緯度も経度も両方地図に書かれてある。



0217F7E28 034536xx



【ほう。頭がいいボスだぜ。5歳で地図が読めちまうなんて。とんでもねぇよ】

「そ、そうかなぁ?ところで最後の2桁は高度ってことでいい?」

【d( ー̀֊ー́ )】


このスキルには色々と言ってきたがなかなか憎めないやつだ。


このスキルの性格の元になった前世の僕は意外と憎めない奴だったのかもしれない。


だが……


​───────ニートなのだ!


まぁいいや。

チートチート。



0217F7E28 0345,3668



「ふぅ……こんなものかな、この高度だと地上100メートルくらいの空に出るはず」


高度は高めに設定した

緯度と経度が合っていてもそこに何があるのか今の僕には分からないし。


壁や地面に埋まるのは嫌だからね。


【高度について言おうとしたが要らぬお世話だったか。さすがだぜボス。よっ、世界一ィ!】

「へへっ。照れるよ」


そう呟いて僕は立ち上がった。

手にはこの前父上から貰った金貨5枚。


「よし、リンダリアに行くぞ」

【その前に落下ダメージ無効化チートを使っときな。念の為体力マックスとかその他にも色々重ねがけもしとくんだ】

「あ、ありがとう忘れてた」


言われた通り僕は色んなダメージ軽減チートを重ねがけした。


ドキドキ!


さぁ、チートを発動させよう。


(飛べ!)


ポッ。

次の瞬間僕の体は宙に放り出された。


ヒュー。

落ちるぅぅぅぅぅぅ!!!


「助けてぇぇー!!!」


反射だろうか。


その場で必死にもがく。

なんの意味もないけどもがく!!


「うわぁぁあぁぁ!!!!」


ベシャッ!


顔面から地面に落下した。


「死ぬ!死ぬぅぅぅぅ!!!って、あれ?」


死んでない。

それで思い出した。


ダメージ無効化チート使ってたんだった。


【顔面ダイブか。いくら無敵とは言えもうちょいなんとかなんねぇのかい?運動神経の悪さ出てるぜ?】

「お恥ずかしい限りでございます」


そう答えて服に着いた砂埃を払いながら立ち上がった。


ぐるーっと周りを見た。


「すげぇ、全然違う景色だ!」


僕の暮らしていたシャイリーン大陸は魔法がすごく発達していた。

そのお陰で、水道とかはあったしお風呂とかにも入れたし、なんだか現代日本に近い雰囲気があったけど、この大陸は別だった。


「なんていうんだろ?中世ヨーロッパ風な、そんな世界?」


そう呟きながら歩いてみる。


歩いて大通りに出ると前をリザードマンの男が横切った。


「すげぇ、リザードマンだぁ」

「お?小僧なんだ?」


ふと漏れた声にリザードマンが返事してくれた。


「初めて見ました、リザードマン!かっけぇ!」

「そ、そんなにキラキラした目で見るなよ。照れるじゃねぇの。へへへ」

「口から火は出ますか?」


ボウッ!


「あつっ!すげぇ!火が出た!」

「へっ。朝飯前よ。観光に来たのか?俺ら冒険者のかっこいい姿をパパとママと見ていけよ。へっへっへ」


リザードマンは歩いていった。


ウキウキしながら僕はギルドに向かう。


「ふふん♪ほんとにリンダリアに来ちゃったぁ」


スキップするような感じでギルドに向かうと扉を開けて中に入る。


ゴチャァ。

ザワザワ。


(お酒臭い)


中は冒険者でいっぱいだ。


それにお酒と色んなにおいが混じってクサイ。


ま、それは置いといてとりあえず冒険者登録してみよっかな?


「すいませーん」


僕はカウンターに駆け寄るとつま先立ちをして、カウンターの中にいた女の人に話しかけた。


「はい?」

「登録したいんですけどー」

「あぁ、捜索願いですか?それとも迷子届けですか?」


そう聞いてくるお姉さんに首を傾げながら僕は


「冒険者登録したいんですけど!」


ドタタタタ!!


お姉さんが驚いた顔で後ろに下がった。

びっくりしすぎじゃない?


「ぼ、冒険者ぁぁぁあぁぁあ?!!!!」

「お、お金はあります」


金貨5枚をカウンターに置いて見せた。


「登録料、足りますか?」

「一応年齢を聞きたいんだけど?」

「5歳です」


お姉さんは首を横に振りながら近付いてきた。


「ごめんねぇ。子供は冒険者登録できないの。後3年くらいは最低待ってね」

「えぇ?!せっかくリンダリアに来たのに?!」


ガックシ。

ショックだ。


せっかく冒険者になろうと思ったのに。

とぼとぼと歩いて出口に向かっていく。


「リンダリアにきた……?」


背中からそんな声がボソリと聞こえた気がした。


「ちぇっ……」


ギルドの外で地面を軽く蹴りながらボヤく。


「せっかくきたのに……つまんないのぉ」

【どこの世界にも決まりってのはあるもんさ】

「うん、まぁそうなんだろうけどさぁ」


その場で座り込んで呟いた。


「大人ならなぁ……」


前世にもあったなぁ。

子供の時大人になりたいって思った瞬間。


まさかこんなところで前世と同じ思いができるなんて思っていなかった。


「ん?」


そうだ。


にんまり。


「大人になればいいじゃないか!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る