第3話 昨日のチートの効果

「ルビアス様♡」

「あ〜ん♡」

「ずるい!私がルビアス様にあ〜んさせるんだから!」

「僕は逃げないから交互にあ〜んさせてよ」

「「「はい!ルビアス様!」」」


僕は無事制服の女子高生美少女100人に囲まれていた、のだが。


「……アス様?」


天の声が聞こえた。

この声は。


エイルーンだ!


「あ〜れ〜」

「僕の美少女軍団が!」


突如、僕の美少女100人は巨大なエイルーンの手によってなぎ払われて消えた。


僕はこの時気付いた。

しょせん、夢は夢なのだと。


​─────すべては、いつか終わる夢なんだと(賢者モード)


そこで、僕の夢は覚めた。


「ん……んぅ?」


目を開けるとエイルーンの顔があった。


「お昼です。そろそろ起きてくださいルビアス様?」

「え、あ、うん」


寝ぼけた目を擦りながら返事をして僕は布団から出てきた。


そこで、ふとズボンが濡れていることに気付いた。

おそるおそる布団を見てすべてを察した。


「わぁぁぁぁ!おねしょしちゃった!母上に怒られるぅぅぅ!!!」

「ルビアス様?!」


僕のベッドを見て全て察してくれたエイルーン。

それから僕のおねしょの後処理をしてくれるようだった。


【ドライ】


生活魔法の乾燥魔法でおねしょの証拠を消してくれたエイルーン。


「ありがとー」

「い、いえいえ。専属の家庭教師として当たり前のことです」


と言ってからエイルーンは話しかけてきた。


「坊っちゃま。本日は訓練ではなく、座学をしようと思います」

「座学?」


僕がキョトンとしているとエイルーンが部屋の中にあった折りたたみ式の椅子や机を用意し始めた。


これで座学を行うらしい。

たまーに行われるので流れは知っているので僕は席に座った。


「久しぶりだなぁ、座学」


今日は何を教えてくれるんだろう、そう思っていたらエイルーンが口を開いていく。


「まず、この世界についておさらいしましょう。ルビアス様は学園に入学されると聞いておりますので、今からそういった知識などを学んでおきましょう」

「うん!」


エイルーンは机に地図を広げた。

世界地図だった。


「この世界には現在7つの大陸があると言われています」


その言葉通り地球で言う、ユーラシア大陸のような大陸がそこには7つあった。


「うん。僕たちがいるのは光の大陸、シャイリーン大陸だったよね?」

「そうでございます。流石ルビアス様。よく覚えてらっしゃいました」

「へへ、すごいでしょ。えっへん」


前世の僕は47都道府県を覚えてなかったけど、7つしかないなら余裕である。


「ところで、なんでいきなりそんな地理の話から入るの?」


こんなものかなり前に聞いてもう覚えている知識だった。

今更聞くものでもないと思うんだけど、と思っていたら説明してくれるようだ。


「七大陸で出来ている、という話が過去の話になったからです」

「え?まさかどこかの大陸が滅んだの?」


この話も聞いていた。

現在の大陸間の力量差で言うと突然どこかが滅ぶ、なんて話はないということだったけど。


それに滅ぶとなると七大陸中最弱の大陸、シャイリーンだと思うんだけど僕達はなんともない。


「と、なると。シャイリーンより少し強い、くらいの大陸であるリンダリア大陸が滅んだ、とか?」


心当たりがある大陸名を口にしてみたが首を横に振るエイルーン。


「違います」

「えー。ならわかんないよ〜」


僕は椅子の背もたれに背中を預けてエイルーンに答えを求めるとエイルーンは前置きをしてきた。


「いいですか、驚かないでください」

「うん」


落ち着くためにエイルーンが持ってきてくれていたお茶を口に含む。


それにしても一体どこなんだろう?滅んだのは。


「滅んだのは、暗黒大陸です」

「ぶふぉっ!」


ガターン!

僕は口からお茶を吹き出した。


ちょ、ちょっとちょっと待てー!


「だから驚かないで下さいと言ったのですが」

「えー、だって七大陸中最強の大陸だったんでしょ?」


暗黒大陸。

魔王と呼ばれる存在が支配しており、このままいけば全世界を支配すると思われていた七大陸中最強の大陸だった。


それが滅んだなんて驚かない方が無理でしょ。


「なんで滅んだの?」

「原因は不明です。昨日の夜から今朝の間、いつの間にか消えていたそうです」

「はぁ?!!!!突然消えるわけなくない?!」

「そ、それが本当に消えたそうです」

「そ、そんなわけ……」


と言いかけて昨日のスキルについて思い出す。


あれはもしかして


(暗黒大陸を滅ぼすコードだったわけ?)


もし、そうだとすれば大変だ。

僕には指先一つで大陸を消し飛ばすだけのスキルがあるんだから。


「ルビアス様、なにか心当たりがあるのですか?」

「あ、あるわけないじゃないか」

「そうですよね。5歳の子供が……暗黒大陸を消し飛ばすなど」


と、納得してくれたエイルーン。

彼女も僕が滅ぼしたかもしれない、なんてことは普通考えられないだろうが。


(でも、多分僕だと思うんだよな)


現状を考えればそれ以外有り得ない。


暗黒大陸は頭1つ抜けて強かった大陸で、どこの大陸も勝ち筋が見えていなかった大陸。


それが急に消えたのだから。


(あのスキルを闇雲に使うのはやめておこうか。シャレにならないなぁ……)


今回のコードの対象が暗黒大陸だったから良かったものの、自分の住む大陸のシャイリーン大陸が対象だったら僕達は今こうして話せていなかったかもだし。


なにはともあれ、あの女神。

とんでもないスキルを僕にくれたようだ。


「ところでエイルーン。今日は鑑定スキルとかを教えて欲しいなと思うんだけど」

「鑑定スキルですか?」

「うん」

「なにに使うつもりですか?」

「ステータスを見たくてさ」


昨日の夜、本を読んでこの世界にステータスがあるということは確認していた。

自分のステータスが見れなかったのは鑑定スキルを僕が持っていないから。


「ステータスを見たいのですか?分かりました。では、鑑定スキルをお教えしましょうか」


そう言って僕を外に連れ出したエイルーンは早速鑑定スキルについて教えてくれる。


「大切なのは念じることです。そして口にするのです。【鑑定】と。そうすればあらゆるものを鑑定できるようになります」

「うん、分かった」


僕は早速、エイルーンが用意してくれた果物に


「鑑定」


と、呟いてみた。

するとブゥンと目の前に浮かび上がるウィンドウ。



名前:リンゴ



それは僕が今まで見てきた、チートスキルと同じような見た目をしていた。


「お、おぉぉぉぉ!!!」


これを見て1番最初に驚いたのはエイルーンだった。


「最初から鑑定スキルを使えるなんてすごいですよルビアス様」

「そ、そうかな?えへへ」


そうやって褒めてくれるととっても嬉しくなる。


でも、僕は知っていた。

鑑定スキルが初歩中の初歩スキルであることを。


冒険者や魔法使い、と呼ばれる人達は基本的にこのスキルを使える、ということも。


なぜかと言うと自分のステータスを確認するのは冒険する上でとても大切なことだからだ。


「はい。天才ですよ!」

「わーい!」


だと言うのにエイルーンは僕のやる気を出そうとそんなこと絶対に言わない。

出来た家庭教師だ。


中身がこんな斜に構えたおっさんの僕じゃなければとてもいい家庭教師なのだろう。

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