第7話2か月後

甲斐は痩せ細り、風に当たっても倒れそうな体型をしていた。

南川が、甲斐に食事をさそった。

甲斐の顔色は黄土色をしていた。

「甲斐、この店で一番高いヤツ食え」

「高いやつか~、じゃ、干しアワビとフカヒレ」

「おいっ!チヨハバア、干しアワビとフカヒレ2人前」

「あいよっ」

南川はタバコを吸いながら、

「甲斐、元気じゃねぇか?末期ガンでも何年も生きている人沢山いるぞ!」

「だんだん、飯が食えないんだ。カロリーメイトの液体しか喉を通らないんだ。最後にアワビとフカヒレが食べたくて」

甲斐はほとんど水の焼酎を呑んでいた。

「はい、おまたせ~」

カウンターに干しアワビの甘辛煮とフカヒレのスープが並んだ。

甲斐はアワビを二切れ、フカヒレを一口飲むと南川に渡した。

甲斐は固形物を食べないので、骨と皮状態。

だが、無理強いは出来ない。


「彼女の美樹ちゃんのことだが……」

「知ってるよ!別れたいんだろ?」

「……そうだが。何かあったら、オレに言ってくれよ!甲斐!オレ君の不安を受け止めたいんだ」

甲斐は焼酎を飲み、口角から焼酎を垂らしてそれをお手拭きで拭い、

「ありがとう、南川、もう僕は長くはない」

と、甲斐は言ってカバンから封筒を南川に渡した。

「これは、僕が死んだ時に開いてくれ!絶対だ!」

「分かった」

すると、突然、甲斐は白目を剥き椅子から転げ落ちた。

「甲斐、甲斐!」

周りが救急車を呼んだ。南川も救急車に乗り、大学病院に着いた。


甲斐は処置室に運ばれ、救命処置を受けた。

直ぐに、甲斐の実家に電話を掛け治療方針を伺った。延命処置はしないで欲しいと言われた。

その夜は涼しかった。

甲斐のせん妄が続いた。

「み、南川君。2番が正解でした」

甲斐は苦しい中でも、南川を意識していた。

そして、明け方の5時、甲斐は逝った。

南川は封筒を開いた。

3000万円の保険金、その他の株を東北の母親と折半するように書かれていた、

南川は、その書類を細かく千切って捨てた。

紙くずは、風に舞いとんでいった。


南川は手紙だけは残していた。


「 南川君、君は最高の友達だ!僕は一生わすれない云々」


南川はタバコに火をつけた。眼は赤くなっていた。


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朝がまた来る 羽弦トリス @September-0919

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