第6話お見舞い

南川が入院している赤十字病院へ向かった。

入り口で、ガードマンに南川の部屋番号を尋ねて、エレベーターに乗った。

8階の病棟で、802を探した。

あった。

カーテンで仕切られた南川のベッドに向かうと、南川は着替えをしていた。

「オッス、南川」

「あぁ、甲斐か。遅かったな。今日、退院なんだ」

南川は、バッグにバスタオルやら、パジャマを詰め込んでいた。

「遅くてゴメンな」

「気にすることはねぇよ。今から、丸八寿司行くか?」

と、甲斐に背を向けたまま、尋ねた。

「お、オレはいいけど、お前、糖尿病だろ?いいのか?」

南川は振り向いて、

「糖尿病なんて、毎日の食事と運動で良くなるんだ。今日、1日飲んだって変わりねえ

「それなら、いいけど」

南川は会計で8万円払い、タクシーで甲斐と一緒に柳橋やなぎばしの、魚市場の近くにある丸八寿司に向かった。

2人は、ビールを飲みながら特上寿司を注文した。


ビールから日本酒に代えて、2人ともいい具合に酔っぱらうと、甲斐は南川にボソリといった。

「南川、実はオレ、ガンなんだ」

「アハハハハ。冗談はよせよ」

「ホントなんだ。信じてくれ」

甲斐はバッグから臨床検査センターの書類を見せた。

「何々……」

南川は黙ってしまった。

「南川は、僕の余命は後3ヶ月なんだ」

「す、ステージ4って……分かった。今日はとことん飲もう。アルコール消毒だ。アハハハハ」

南川の目には涙が潤んでいた。

「これから、毎日飲むぞ。お前が飲めなくなるまで。お前が延命治療しないことは分かっている。彼女さんには話すなよ……。いつか、オレが伝えたるで」

「……南川ありがとう。よ~し飲むぞ。大将、あん肝と茶碗蒸し」

「ハイッ、喜んで」

2人は何処と無く、遠くを見つめる様にして、酒を飲んでいた。

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