第65話 抜き打ちチェック
新学期から二週間ほど経ったある日。
俺はダンジョンで、通販で買ったメイド服を着せたネフリと委員長を侍らせてくつろいでいた。
ネフリに着せてるのは、胸元にハートのフリルがついた、丈の短いセクシー風のやつで、委員長のは、水色で少女趣味の、アリスっぽいやつだ。
「マスター。どう? 気持ちいい?」
ネフリが俺の肩に胸を押し付けながら、肩を揉んでくる。
ネフリは力があるので、結構キクな。
「おー。気持ちいいぞ。特にメイド服でマッサージしてもらうと、効果が三倍増しだ」
俺は鷹揚に頷く。
「マスターはこの服が好きなの?」
「ああ、好きだな」
「じゃあ、ネフリずっとこの服着てる!」
ネフリがそう宣言して、俺に頬擦りしてくる。
「はっはっは。そうか。そうか。じゃあネフリは俺の専属メイドだな」
俺はそんなネフリの頭を右の手で撫でた。
「ちょ、ちょっと、充悟くん。こ、こんなことさせて楽しい? 私、かなり恥ずかしいんだけど」
俺の左の手の爪を切っている委員長が、頬を染めてこちらを睨んでくる。
日頃大人びて冷静な感じの委員長に子どもっぽいメイド服を着せるのは、大人に幼稚園児の服を着せるような背徳感があった。
「なんだよ。メイド服の着せ替えに付き合ってくれるって言ったのは委員長だろ?」
「映画に出てくるようなかわいらしいメイドさんの服ならちょっと着てみたいと思ってたけど、こんな幼女みたいな服を着せられるなんて聞いてないわよ! こういう服だったら、シャテルに着せればいいでしょ!」
委員長がそう言って、床でゴロゴロとタブレットをいじるシャテルを指さした。
「イインチョーは、フェチズムというものをわかってないのお。元々子どもっぽい見た目のわらわがそのような服を着ても、何のギャップもなくておもしろくなかろう。真面目なお主が着るからこそ、ジューゴはおもしろがっておるのじゃぞ」
シャテルが悟ったような口調で言う。
「その通り! わかったら、存分に恥ずかしがってくれ。俺はもっとうろたえる委員長が見たいのだ。うはははは」
俺はシャテルの言葉に同調して、魔王っぽく豪快に笑った。
日頃、清楚でまともな服しか着ない委員長には、メイドのコスプレはかなりの羞恥プレイらしい。
彼女の色んな表情を見たいと思うのは、彼氏として当然だよね?
「充悟くんの変態! 深爪にするわよ」
「まあまあ。そんなに怒るなよ。今の委員長のメイド服姿もかわいいぞ。なんというかオタサーの姫っぽくて」
「それって褒めてないじゃない。でもまあ今日くらいは付き合ってあげるわ」
委員長がジト目になりながらも、まんざらでもなさそうに言う。
「ジューゴ様。お屋敷の掃除が終わりました」
ダンジョンの掃除を任せていたパルマが早くも戻ってくる。
「おっ。早いな。さすがはメイド」
「前々から申し上げなければと思っておりましたが、私は侍従ですので、正確にはメイドとは違います。どうかお間違えなきよう」
パルマは慇懃な口調でそう訂正して、俺に一礼する。
「そうなん? まあ、ともかくお疲れ。適当に休んでていいよ。何だったら、パルマも服を着換えちゃう? 色んな種類があるぞ?」
「お戯れを。この服はローザお嬢様から頂いたものですから、おいそれと脱ぐ訳には参りません」
軽く流された。
ほんとパルマちゃんってば鉄壁―。
まあお金次第で誰にでも尻尾を振るメイドよりはこっちの方がいいよね。
ローザに頼んだら、パルマちゃんをくれたりしないかな。
しないだろうなあ。
パルマが俺の『鑑定』をはじく効果なマジックアイテムを貸与されていることから考えても、二人の間には相当な信頼関係があるみたいだし。
「ご主人様。お客様が、ご主人様を、お呼び、です」
そんなことを考えていると、店番をしていたシフレが姿を現し、俺に告げる。
「俺をか? 誰だ?」
俺は眉を顰めて問う。
「光神教の、使徒さん、だ、そうです。ノーチェさんも一緒です」
「使徒? ティリアか?」
「別の方、です」
シフレが首を振って言う。
「えー、なんだそれ。クソめんどそうだな。そいつが男だったら俺は絶対会わないぞ」
「女性、です。かなり、かわいらしい、です」
「マジで? わかった。行くわ」
俺はかわいこちゃんみたさの興味本位で、ホイホイと店の方に向かう。
ティリアも相当の美人だったから、これは期待がもてるぞ。
「きましたか。――バジーナ様。この者が魔王ジューゴです」
扉を開けたその先、俺の紹介をするノーチェの傍らに控えていたのは、チンチクリンの幼女だった。
桃色の三つ編みで、かわいらしい髪飾りをして、ワンピースも似合っているが、見た所小学校低学年くらいにしか見えない。
シャテルも幼女といえば幼女っぽいが、それでも小学校の高学年くらいの外見だし、なによりあいつにはおっぱいがある。
だけど、こいつの胸は洗濯板だし、さすがにここまで見た目が幼いと俺の性欲センサーも反応しない。
基本的に俺はロリ系よりもお姉さん系が好きなのだ。
「私は光神教第五使徒のバジーナよ! 今から、抜き打ちの『色欲』の大罪度チェックをするから、神妙にしなさい!」
バジーナと名乗った幼女は、身の丈に余る長い槍を俺につきつけてきて、一方的にそう宣言した。
えー。
確かにかわいいけど、なんか期待してたのと違う。
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