第10話「怖さと後悔」

 車は草原を走っていた。

 カザネは言う。


「なんか…モンスターみたいなのが多いね」

「ここは…そういう世界なのかもしれないね」


 すると、カザネが案内役に体を寄せる。


「こ…怖い…」

「え?あっ…ちょ…運転しにくい…」


 案内役の肩にしがみついて離れない。

 少し、涙もこぼれていた。


「…」

「はぁ…大丈夫。言ったでしょ?君の身は保証するって」


 しがみつきながら、カザネは言う。


「でも…怖いものは怖い…」

「大丈夫」

「…」

「僕は君の案内役だから」


 「おい…カザネ…なんかドラゴンいるんだけど」

「え?」

「うしろ…」

「ぎゃーーー!」


なんと後ろを体長50mほどのドラゴンが追ってきていた。


「スピードこれ以上上がらないの?」

「無茶言わないで…これで精一杯なんだ!」


少しずつ追いついてくる。

そして、ついにカザネが掴まれて外に投げられる。


「うわぁぁぁ!」

「カザネ!」


カザネは、少し痛そうだがゆっくり立ち上がる。


「大丈夫…」

「大丈夫じゃないよ」


案内役が急いで車を止めて、駆け寄ってくる。

その瞬間。


「爆炎!!」

「ん?」


ボフッという音とともにとてつもない炎が放射されて、ドラゴンは一瞬で灰になる。


「大丈夫?君たち?」


────────────────────


前には、ドラゴンが一匹いる。


「こ…こいつは…」


勇者は言う。


「やばい…あまりに実力差があり過ぎる…」


女の子は勇者を庇うように、両手を広げて前に立つ。


「私が…守る!」

「よせ!お前死ぬぞ!」

「大丈夫っ!」


そう言うと、女の子はドラゴンに立ち向かう。

剣で一撃入れることに成功した。


「よし!」

「アオイ!後ろ!」


どうやら、女の子の名前はアオイと言うらしい。

アオイの背後からドラゴンがパンチを繰り出すと、アオイは防げずに吹っ飛んで岩にぶつかる。


「ぐはっ…」

「アオイ…」


ドラゴンが炎ためている。

何か大技を繰り出そうとしているようだ。


「ぐ…」

「はーー!」


勇者が剣で立ち向かうが、何度も吹き飛ばされる。

それでも、勇者は傷だらけになりながら戦う。


「はぁ…はぁ…逃げろ!」

「え?でも…勇者様は…」

「大丈夫だ!俺は、死なねぇ!安心して逃げろ!」


その後アオイは涙を何度も拭いながら、全速力で走って逃げたという。

そして、逃げている最中に勇者の悲鳴が聞こえたが、無我夢中で走って逃げた。


────────────────────


カザネたちの前には、一人の鎧を着て、剣を持った女の子が立っていた。

カザネは言う。


「あ!ありがとうございました!本当にどうなることかと…」

「いえいえ…」

「どうしてあなたはお強いのですか?」

「いや…私は強くなんかないよ…」


剣を見つめる。


「これはね…私の大切な大切な人が生きていた証なの。私は、あの時勇者様をおいて逃げてしまった。その後、瓦礫をかき分けて見つけたのが、この剣なの。だから、勇者様はまだここにいる。そして、私は勇者様のように強くなるために…ただ目の前の問題に向き合っていきたい…いや…生きたい!」






車は、草原を走っていた。


「なんか…いい人にあったね」

「そうだね」

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