第9話「効率」

 車は、亜空間を走っている。


「もうすぐ、次の世界だよ」

「ふぁぁ…」

「カザネって、毎回寝てるよね…」

「まぁ…楽できるなら楽したいよね」

「ふふっ…面白いね」

「そうかい?私が…面白い人間?人間だから面白いのか」

「たまに、カザネの言うことが理解できないときがある」

「私も、君の言うことが理解できないことがある」

「なんでだろうね。同じ人間なのに…」

「いや、同じじゃないよ…私は私だ」

「そうだね」


 車で亜空間を走っていると、次の空間が見えてきた。


「あ!見えてきた!次の世界だ!」


 世界に入った。

 あたり一面に緑の草原が広がっている。

 カザネが言う。


「近くに、街はなさそうだね」

「そうだね…あの木の下で少し休憩しよう…」

「うん…」


 車を木の前に止めて、案内役は降りてすぐ寝転がった。


「はぁ…気持ちいいなぁ…草の感触が」

「そうかい?」

「世界は美しいなぁ…」

「そうだね。最高に残酷で美しいや」


 そう言うと、カザネも寝転がる。




「おい!カザネ!起きて!」


 気づくと寝ていたようだ。


「ん…なに?」

「周りを見て…」


 周りを見るとコブリンの群れに囲まれていた。

 案内役が言う。


「僕も、寝てて気づかなかった…」

「私も…」


 カザネたちは、唖然していた。

 案内役は、問う。


「どうする?」

「どうしようか…ハンドガンしか持ってないし、こんなにたくさんを一人で相手にはできない。それを考えると…」

「考えると?」

「車に乗ろ!」

「え!?」

「いいから、はやく動かして!」

「で…でも!囲まれてるよ?」

「とりあえず動かして!」


 カザネたちは、車に乗ると急いで発進させる。

 直後、カザネが後ろの方に2発銃弾を撃つ。

 すると、コブリンが銃弾の方向に少しずつ歩いていく。

 でも…5メートルほど前には、まだ一匹コブリンがいた…。


「ぶつかるっ…」

「大丈夫」


 カザネは、そのコブリンの足に銃弾を撃ち込む。

 すると、ゴブリンは地面に倒れ、ギリギリで、タイヤとタイヤの間をすり抜けていき、ぶつからずに済んだ。


 カザネは言う。


「ふ…なんとかなったね」

「なんで殺さなかったの?」

「え?」

「カザネの銃の腕なら殺すこともできたはずだけど…」

「私が…殺さないでも解決するなら、殺さないほうが効率がいい…それだけさ」

「そう」


 車は、草原をひたすら走っていた。

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