第8話「自由は不自由」

「うそっ…でしょ…うっ…うっ…」


 案内役は、動かない。


「私っ…これから…どうしたら…いいの…」


 あの日あの時あの場所で、私は途方に迷っていた…

 そして、気がつくと気を失っていた。

 ────────────────────


「ん?ここは…どこ?」

「おはよう!僕は君の案内役だよ」

「え…生きて…たの?」


 思わずカザネの目には涙が溢れる。

 すると、案内役は笑顔で、


「ふふっ…だね!なにせ、僕は…君の案内役だから…」

「ふふっ…バカ…死んだかと…」

「バカだな」

「ん?今バカって…」

「さぁね…」

「ふーん…」


 車は、亜空間を走っていた。

 案内役は、言う。


「次の世界はいい世界だといいね」

「ねぇ…」

「ん?」

「あの時…私っ…人をっ…殺したんだ…」

「そうなんだ。僕が撃たれたあとかな?」

「うんっ…私っ…死にたくなくて…ついっ…」


 カザネの目からは、涙がこぼれていた。

 すると、案内役が車を止める。

 そして、カザネの肩を持ち体を引き寄せる。


「なっ…なに?」


 案内役の顔は、至って真剣だった。


「カザネ。旅をしているときは自分の命を優先して…。もちろん、むやみに殺せとは言わないけど…自分が殺されそうになったとき…」

「…」

「その時は、殺せ…」

「え…でも…」

「でもじゃない。旅では常に自分の身を優先して考えるんだ。その為にも余計な混乱は避けたい。」

「うん…」

「死んだら意味ないよ!」

「うん…」

「君は、君を殺そうとした人を助けるのかい?それは、君にとって正しいことかい?」

「違う…違うけど…」

「自分を信じて!人間には、その素質がある!自分で自分を下げてどうするのさ!前に進もう!いかなるときも!」

「そうだね」


 車は、再び走り出す。

 カザネは問う。


「どこに行くの?」

「何も考えてない」

「え?」

「何も考えてないことを考えてる」

「ふふっ…意味がわからないなぁ…君という人間は…」

「人間なんてみんな意味不明さ」

「ふふっ…それもそうだね」

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