第6話「甲乙」

「さぁ…これからどうする?」


 カザネたちは、車を走らせて草原を走っていた。

 カザネが言う。


「この世界は、少し現実味があるね」

「そうだね。すこし、さっきまでの世界とは違う空気を感じるよね」

「空が青い…」

「あぁ…」

「青いんだ…空は」

「うん…さっきまで殺風景な世界にいたからね」

「違うんだ…少し…なんか心の奥から湧き上がってくるものがあるんだ…」

「ふふっ…安心してくれ。僕に任せて!僕は君の案内役だから」

「でも、マニュアルにはこんな案内なんて書いてなかっただろう?」

「でも、絶対マニュアル通りにしろって決まりなんてなかったよね?」

「ふふっ…君はつくづく面白いよね」

「君もだよ」

「や…やめてくれ。綺麗事はいらない」

「なに…自分も言ったくせに」

「いや、あれは…」


 カザネが神妙な面持ちで、


「ねぇ…」

「なに?」

「さっきの街は、犯罪がないんじゃなくて、単純にないと仮定してただけだったよね?しかも、ポイ捨てで殺されて…消されて、なかったことになる」

「ある意味犯罪がないとも言い切れるよね」

「まぁ…そうだね」

「なにをもって犯罪と呼ぶのかな?犯罪と言えば犯罪になるのかな?」

「ん…まぁ…その場所で犯罪と判断されるか、どうかにもかかってくるし、環境とかも影響してくるし…街の外ならどんなことしてもいいけどね」

「たとえば…」


 すると、カザネはポケットからハンドガンを取り出して、案内役に銃口を向ける。


「こんなことも?」

「え!?」


 カザネは、少し笑みを浮かべながらハンドガンを下ろす。


「殺してもいいよ?」

「バカだな。殺すわけがないだろう?君は私の案内役だぞ?」

「そうだね。忘れてた」

「それに…私は必要なこと以外はしない主義なのでね」

「僕も」


 車は、草原をひたすら走っていた。

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