第5話「犯罪のない場所」

 車は、次の目的地へと向かっている。


「ん…ふぁーー!」

「もう着くよ」

「むにゃむにゃ…もう少し…」

「起きて」

「分かったよ…」


 車は、亜空間を抜けて次の世界に着いた。

 カザネは言った。


「よし…行くか…」

「ふー…少し寒いね。ここは」

「どうだろう…そんなに寒く…へっくしゅん!」

「結局、寒そうじゃないか」

「くしゃみしただけだ」

「身震いしてるし」

「私は、こんな寒さでへこたれないよ」

「もう、寒いって認めてるじゃん…」

「そんなことより行こう!あっちに街が見える」

「はぁ…」


 カザネたちは、街の入口に着いた。

 門が閉まっている。

 カザネが言う。


「道を開けて」


 すると、慌てたように案内役は言う。


「おい!こういうときはこう言うんだよ?」


 そう言うと、案内役が礼をして。


「旅のものですが…」

「おぉ…旅人さんですか。どうぞどうぞ!中へ」


 すると、門が開く。

 そこには、中世ヨーロッパ風の建物が立ち並んでおり、いろんな店があった。


「とりあえず、宿屋を探そう」


 そう言って案内役は歩き出す。

 カザネも後を追うかたちで着いていく。


「すいません、今って部屋空いてますか?」

「空いてますよ!〇〇号室です」

「ありがとうございます」


 そして、案内された部屋へと向かう。

 カザネが、言う。


「ねぇ…鍵っていらないのかな?」

「ん…確かに…普通いるよね」

「…」

「まぁ…そもそも、鍵がいらないのかな」

「え?どうして?」

「受付の人が言ってたでしょ?」


 カザネは受付の人が、言っていたことを思い出す。

(あの…鍵いらないんですか?物盗まれたりとか…)

(安心してください!この街には犯罪なんてありません。とても治安が良いので…)




「ね?」

「そう言えばそんなこと言ってたな」

「だから、犯罪の心配なんてないと思うよ?」


 部屋に入ると、洗面台やテーブル、大きなフカフカのベッドが一つ…。


「一つしかないね」

「はぁ…」

「ん?なに?僕が何を考えてるかわかったの?」

「わかるよ。そのくらい…私もそんなに鈍感じゃない」

「一緒に寝る?」

「嫌だ。私は、一人で寝る」

「じゃあ…僕は寝るよ。ふぁぁ…眠くなってきた…」

「そうかい。じゃあ…僕は、街を見てこようかな。」

「いいね!じゃあ…おやすみ」


 そしてカザネは宿屋を出た。


「ん…街に出たはいいけど…」


 カザネが、数人の男に囲まれている。


「あんちゃん!俺と一緒にあそこの店で飯食わねぇか?」

「お断りします」

「ずるいなぁ!俺も!俺も!」

「もっとお断りします」


 カザネは、男たちをかき分けて先へ進む。


「あぁ…もう…ほんとに…」


 そう、カザネは自分がとてつもなく美人であるということを忘れていた。


「それにしても…本当に治安がいいんだなぁ…」


 街の中は、とても賑わっており警察などの姿が一切見えなかった。

 その日は、宿屋に帰って案内役と交代で寝た。


「ふぁぁ…おはよう」


 案内役は、窓を見ていた。


「ん…」

「どうしたの?」

「いや、何でもない。行こうか…」


 部屋を出て、受付へと歩を進める。

 道へ出ると、目の前でポイ捨てをした男性がいた。

 すると、その瞬間!


 男性に向かって、一発の銃弾が撃ち込まれる。

 その方向を見ると、カメラのようなものがあった。

 そして、その死体はあっという間に転送されたかのように消えた。


 カザネが、少し苦笑しながら、


「ふふっ…やっぱりね。こういうことだね」

「ほらね、犯罪なんてなかったでしょ?」

「さ…行こう」

「そうだね。行こうか…」


 カザネたちは、門で街を出る手続きをして外に出た。

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