第2話 「刻々」

 僕らはこのセカイを出たらしい。


「セレヌティロープ地点を経由して、カプラという世界に向かう。」

「ふーん。そこはどんな世界なの?」

「分からない。」

「地図持ってるじゃん。」

「地図にも載ってないんだよ。そんな詳細な情報は」

「その地図はいつ持ってきたの?」

「さぁね…」

「お互い隠し事が多いね」

「そうだな。君も隠してることがあるのかい?」

「さぁね…」

「ふふっ…僕らバカだな…」

「ま…それは確かなことだね」


 案内役が聞く。


「あなたは君が好き?」

「さぁね…好きなのかな?まぁ…好き嫌いなんてシンプルなもので決められれば一番いいけどね。それにしても…君はとても面白い質問をするんだね」

「僕は、自分が嫌いだ。そのせいで他人が輝いて見える。他の人やものがとても羨ましいよ。この世界も…。そう考えたら、僕は僕自身のことも羨ましいと思ってるのかもしれないな…」

「私には、難しいことは分からないや。でも、今のままで上手くいくのなら、今のままが一番いい気がする」

「ん?」

「あ…頭バグった?」

「いや…とりあえず今は今のままで行こうか」

「そうだね。それが一番いいや。じゃあ私は寝るよ」

「え?ちょっと?君?」

「どうせあと何時間かかかるんだろう?少しぐらい寝かせてくれ』

「睡眠薬で眠ってたけどな」

「言っただろう?私は、今を満足したいんだ」

「まぁ…言ったけど…」

(グゥ~スゥ~)

「寝ちゃったし…ま…いっか!とりあえず先に…今を満足しよう!」


 車は、カプラに少しずつ近づいていた。

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