第2話 新たな探検の始まり

「ふむ」


 僕を思考の海から引き揚げたのは、ニックおじさんのそんな声だった。


 気づけば、僕たちは横並びから一列になっていた。


 洞窟の出口まであと少しというところで、――それは起きた。


 前を歩いていたおじさんが、突然の崩落に巻き込まれてしまったのだ!


 僕の目と鼻の先で、頭上から岩が降り注ぎ、おじさんの体を押しつぶしていく。

 

 あまりにも急な出来事に、僕は身動き一つ取れなかった。


「おじさん!」と声を上げることができたのは、完全に崩落による揺れが収まった後だった。


 岩を押しのけようとするけれど、とてもじゃないが重すぎて持ち上げることはできなかった。


 絶望に膝をついた僕だったが、直後にカチリと頭の中でスイッチが切り替わるような音がした。


 すると、先ほどまで頭の中で波打っていた絶望の感情が、突如として消え去った。


 代わりに、ある使命が僕の中に芽生えた。


 ――後継を作らねば。


 僕は目に映る範囲に落ちている、かつてニックおじさんだった部品の数々を拾い始めた。


 ――僕がこれからは、おじさんになるんだ。


 ――後継を作り、自由を与えて、そして、その「僕」のことを君と呼び、僕のことはニックおじさんと呼ばせることにしよう。


 僕はすでにニックおじさんになっていた。


 これから僕は、後継を作るために毎日洞窟を探検し、手に豆ができるほどに採掘をして、部品を集めていく。


 僕はおじさんが使っていたつるはしを拾い上げる。


 僕の探検は、始まったばかりだ――。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ニックおじさんと僕の探検の歴史 まにゅあ @novel_no_bell

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ