第51話

 彼女と指を絡め合い意識を集中する。

 互いに魔力を全力で引き出す。陰と陽、相反するはずの魔力が複雑に絡み合い、次第に溶け合っていく。不思議な高揚感が俺を満たす。  

 俺の中の彼女が元凶の居場所を教えてくれる。

「あぁ、そこか」

 穂乃香を通して見えた奴は――小さな赤い球体? に見える。それを守るように件のミミズが蠢いている。

 しかし、その赤い球体はよく見れば、至る所に目らしきものがびっしりと確認できる。ギョロギョロ常に動いていて非常に気持ち悪い。見なきゃよかった……。

 おまけに本体は穂乃香にえらくご執心だったようで、その場から離れようともせず只管、彼女に気色悪いラブコールを送っていた。

「ミツケタ、ミツケタ? 契約しよう、一つになろう? 何を言ってるんだか……」

 見た目も悪けりゃ、言葉のチョイスも酷いな……。まぁ、人のこと言えたもんじゃないが。

 混ざり合う魔力が徐々に輝きを放つが、やや青黒い輝きが強い……。

 

 長かったデスマーチもこれでお終い。明日からは穏やかな日々が戻るはず――

 

 やつらを纏めて屠るに足る、魔力はもう十分。

 超高濃度の冷気の波を奴に叩き込む。雑で力技の、頭ゴリラな方法だが、確実に殺れるからヨシッ! 

 なんか問題が起きても、責任は局長がとってくれるらしいのでヨシッ!

 絡め合った指に力が入る。彼女も強く握り返してくれる!

 激しい魔力の躍動を感じる。解放される瞬間を今か今かと待ちわびている。

 魔力が一際激しい光を放つともに――思いっきりぶっ放す!!

 

 地下室全体が瞬時に凍り付き、その尋常ならざる冷気は、辺り一帯に広がり、この季節ではありえない光景になっていることだろう。

 地下深く、龍脈に潜む醜悪な化け物達は何が起きたかも分からぬまま絶命し、砕け散った。穂乃香から深い安堵が伝わる。

 俺はそれを感じると、凄まじい眠気に襲われる。疲労がピークだったのだ……。

 意識が暗転する前に何人かの焦った声が耳に入るが、眠気が……限界で――すやぁ~。


 

 幸い龍脈に大した影響は出なかったし、頻発していた悪性個体の発生も止まった。この騒動はようやく解決した。

 しかし、その日から二週間近く、長野広範囲にわたり異例のドカ雪が発生。九月の出来事である。理由は一切不明。ただの異常気象である。間違いない。

 住民は連日雪の処理に追われることになる。また、作物に大きな悪影響を齎した。農家さん大、大激怒である。いじょうきしょうなので……。

 連盟員は、このドカ雪に対し精力的に雪の処理に励む。その中には局長、副局長の姿もあり、住民は深く感謝したらしい。偉い。

 さらに、長野狩人連盟支部近郊では、強力な魔力障害が起こり、二日ほど業務に支障がでることと相成った。これも、原因は自然現象である。


 *インタビュー

 雪の処理に励む一部連盟員からのコメント。この異常気象に関して

「そうですね。……誰が原因というわけではありませんから。特別なにか言いたいことなどはありません。ただ、こんな時期に見る雪もなかなか乙なものですねぇ」

「まぁ、そうだな、……降っちまってるもんは仕方ねぇんだ。なんか楽しめるイベントでも企画するかねぇ」

「……もしね、この異常気象に原因を作ったやつがいるなら……ぶっ殺してやりたいです。……もちろん仮定の話ですよ?」

「信じられませんよこんな時期に雪なんて……。もう本当に、邪魔で……。本当の本当に邪魔!! で仕方ないですよ!!」

「ヴぉ~ふ♪ ヴぉふヴぉうふ! っヴぉヴぉヴぉっふ~ん」

「いやねぇ~。もう腰が痛くて痛くて……。この年になるとだめねぇ~。早くやんでほしぃわぁ~」

「ええっ、雪かき楽しいですよ! 住民の方が困っているなら狩人連盟は必ず力になりますよ! それに異常気象ですからね!! 自然に文句を言っても始まりませんよ!! ははははっ!」

「えっとその、少しでも早く止んでくれたらいいとオモッテマス……」

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