第33話 限界だぁ~
「かえったど~」
「ほのちゃ~ん、ただいま~」
「ヴォッフ~」
「っ! おかえりなさいっ! みんなっ! 怪我してないですか!?」
連盟の待機所で救護班として詰めていた彼女が、慌てた様子でこちらに駆け寄る。
「大丈夫、大丈夫。大したことなかったから平気平気~」
「良かったです……。ふぅ……」
穂乃香がため込んでいたものを吐き出すように、深く息を吐く。
彼女も長い時間、待機所でずっと負傷者が出た時のために備えているのは大変だったろう……。それも連日とくれば……。
「とりあえず確認された個体は処理できたから、今日はもう解散だって副局長が」
「そうですか……。分かりました。帰る前に一緒だった救護班の方達に挨拶してきます。漣さん達は、先に帰――」
「待ってるよ、大丈夫。慌てないでいいよ」
「……ありがとう漣さん。――んっ」
「おっと――」
彼女が近づいてきて、ほんの軽い抱擁を交わす。
「……無事でよかった。……挨拶してきますねっ!」
短い抱擁の後、彼女は元気に駆けていった。
「「「「ぐぎぎぎぎっぎぃぃっぃ!!!!」」」」
だが、彼女の行動はモンスターを生んでしまった……。俺はそんな彼らを鎮めるためにそっと――微笑む。
「にちゃ~」(渾身の微笑み)
「「「「ぴぎゃっー!!!!」」」」
魔力障害以来、悪性個体の発生が頻発している。悪性固体化したモンスターに統一性はなく、虫型、動物型、植物型、なんでもござれだ。ただ人型だけは、俺達が接敵した個体のみだが……。
まぁ、人の悪性固体化はそんなにあることじゃないから、きっと偶然だろう。それに、難しいことを考えるのはお上の仕事だから、そっちにお任せじゃあ。
今はまだ、程度の低い雑魚と呼べる個体がほとんど。多少数が多くても俺たちでも対処ができる。
確認された瞬間に、対応できる高ランク連盟員が狩りだされ――即座に対処する。俺も含まれているから、最近ちょいしんどいけども……。
穂乃香のような治療魔術に長けているものは、連盟の待機所で怪我人や、汚染されたものに備えてもらっている。一部例外も存在するが……。
(*フロイライン・刃! 戦闘、治療、両方をこなせる歴戦の
ただ――これだけ頻繁に悪性固体が出現するということは、確実に元凶となる大物が存在するのだろう……。非常によろしくない。
さっさと、居場所を把握してぶっ殺さなければ間違いなく大きな被害出る。
局長達には頑張っていただきたいっ!! さっさと特定するんだ!
それに! はっきり言って俺はもうっ! 夜中に呼び出されるのは嫌なんだっ!! ぐっすり朝まで寝たいんだっ!!
後っ! 本部からの増援まだかっ! さっさとこいやぁっ!! さぼっとんのか!? こういう時のための本部のエリートだろうがよぉ!! ったくよぉ。
そもそも幻想種と契約してるやつが来れば、一発で大本を見つけられんだろっ。なに遊んでんだ馬鹿っ!!
*幻想種様達は基本、悪性個体と「 」が大嫌い。また、奴らの気配に敏感。
イキリ散らすような馬鹿な個体なら、真っ先に何処からともなく野良の上位の幻想種様が現れて、ぶっ殺してくれる。
さらに数日
俺達は連日連夜、呼び出されて限界を迎えようとしていた――
たぶん、きっと、絶対――俺たちが呼び出されるのが夜ばっかりなのは嫌がらせだっ!! 絶対そうだっ!! 連盟がオレを オレをっ、こっ殺そうとしているんだっ!! うわぁぁ~!!(錯乱)
「うわぁ~~もう嫌だよぉ~。はだらぎだぐなぃ~。もう眠れないのはいやだぁ……」
「ヴ……ぉ……ふ……」
「Zzzz Zzzz Zzzz」
連盟の休憩室で崩れ落ちる俺たち。ポンタはあまりの疲労で声もだせない……。毛の艶も悪くなっている。おいたわしい……。
アオは部屋に入った瞬間、バタンキューだ。アオぉ……。
しくしくと、俺がみっともなくすすり泣いていると――
「漣さん? 大丈夫ですっ? っ!! きゃっ」
俺はすぐさま彼女に抱き着いた――
「ほのかぁ~!! ここころされるっ!! 過重労働で連盟が俺を殺そうとしてるんだ!!」
そして、なんの躊躇いもなく甘える。
威厳、プライド、誇り、どうでもいいっ! そんなもんモンスターにでも食わせとけっ! ぺっ!! くんかくんかっ!
「もうやだ~よぉ……。ぼくもう、はだらぎだぐないのぉ。あんなきもいやつの相手するの、もうやだぁ。うわ~んっ! がえりだいっ!! おうちでゆっくりやずみだいっ!!」
「漣さんっ……。きっと、もう少しですから……。もう少ししたら、本部の方が来てくださいますから。もうちょっとだけ頑張ろう、ね?」
穂乃香は、俺の頭をあやすように撫でながら、優しく励ましてくれる。
しかし俺は――
「やだやだっ!! もうっ! おうちがえるぅ~!! ほのぁちゃんとがえるんだぁ!! びえ~んっ!!」
俺の心は完全にへし折れていた……。みっともなく駄々をこねた。
「もうっ……仕方ない人ですね――」
彼女はそう口にすると、ぐずる俺を引っ張りベットの方へ連れていく。
「? ぐすんっ?」
「ほらっ漣さん――おいで?」
彼女はベットの上で自身の腿を叩きながら俺を招く。
「クゥーン♪」
「よしよし♪」
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