第29.5話 ???視点
異界の最下層。
???視点
「ああっ!! なんということだ! 素晴らしい!! 彼は良い!! 実にイイっ!! 彼の兄君も素晴らしいが──彼はそれ以上だっ! 極上だっ! 分かるか友よっ!!」
「いや……。彼が器として申し分ないの──」
「馬鹿野郎っ!! あぁ……違う……違うのだ友よ。器? 契約?? そんなものはどうでもいいんだっ!!!!」
あぁ、あまりの興奮に自分を抑えられない。否!! 抑えたくないっ!!
「そうか。まぁ、何でもいいが……」
あぁ、わが友よ。そんなにつれない態度をとらないでくれ……。寂しいではないかっ。元々わが友は、反応の薄い悪魔ではあるが……。だが私はっ!! この胸の高鳴りと衝動を誰かと共有したいのだ! 一緒に喜んで欲しいのだっ! この思いとどけ! My friend──
「……ふむ。分からないな。あの異質な魔力、確かに彼は特別だ。しかし、君の眼鏡に叶いそうな人間は他にもいるだろう? アメリカ、イギリス、中国、インド、イタリア、バチカン──強者など至る所に存在する。ましてや、彼は幻想種と契約しているわけでもなさそうだ。彼のなにがそんなに君の琴線に触れたのかな?」
あぁ!! 彼はやっぱり私のことをよくわかっているぅ。さすが我が友だ!!
「よく聞いてくれた!! 友よ!! 確かに闘争において彼を上回る強者は他にもいよう! アメリカの英雄や、バチカンの聖女など垂線ものだっ! もちろん彼の兄君も──じゅるっ おっと!? 失礼っ……。最上位の幻想種と契約を結んでいる彼らは私から見ても異常であるからなっ! はははははははっ!」
「ならばなぜ?」
途中、私の涎が垂れてしまったが──表情一つ変えずにわが友が問う。相変わらずクールな悪魔であるな! もっと盛り上がって欲しい!! 「ウェ~イ!!」って感じでっ!!
これから話す内容で彼の興味を惹ければよいが。
「彼は私と似ているのだよ。私には分かる。彼が先ほどの闘争で垣間見せた感情はほんの上辺のものだ。内にはもっと強い感情を秘めている。彼は飢えているのだ。自信をさらけ出す場に──殺し合いに! ははははははははっ!! 普段は抑えているのであろう! 自ら律しているのだろうっ!! なんと健気でいじらしいことか……。堪らないよ……。ああ!! 契約など勿体ない……。彼とは尋常なる闘争で
思わず自身の体をかき抱いてしまう。あぁ、早く彼に会いたい。
これは恋??
「あぁ。良くわかった。君にここまで思われるとは……彼は幸せ者だろう」
「!! 本当かい!? ありがとう! じゃあ私は行くよっ! 彼に会いにっ!!」
待っていてくれ愛しの君────すぐに行くよ♡
「待ちたまえよ。どうやって地上に出るつもりだ? 我等は今、契約なしでは地上に──」
「ああ。他の場所なら無理だけど、彼のいる──日本? なら私は大丈夫!! もう何度か上がったこともあるんだ!! 何回か殺されてるけどっ!! ルシは嫌がってるけどあそこは楽しい場所だよっ!! ベルともあったし、食べ物も美味しかったっ!! 今度は殺される前にお願いしてみるよ──」
あぁ! 楽しみだっ!
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