第30話 とりあえず説明

 ミミズ野郎をぶっ殺した後はかなり大変だった。待てど暮らせど応援に駆け付けない連盟員……。魔力通信は復旧しない……。

 仕方ないから、直接連盟に怒りの突撃をかますも長野支部内も混乱の極み。

 勇気をもって連盟スタッフに話しかけるも──

「あの~お伝えしたいことが──」

「今!! それどころじゃありませんっ!! 見てわかりませんかっ!!非常事態ですっ!! 緊急性のない雑事は後にしてくださいっ!!!!」


 馬鹿じゃないですか? みたいな顔された上に、すっごい剣幕で怒られた。内容口にする前に完封された。俺の心も折れた。お姉さんこわいょ……。もぅ、やだぁ。

 羞恥心と恐怖からぷるぷるしていることしかできない負け犬おれ

 そんな負け犬に、天使様ほのかがストラディバリウスもかくやと思わせる美声で励ましのお言葉を下さる。

「大丈夫ですっ! 漣さんっ!! 私たちの遭遇したことは絶対! 緊急の案件ですっ! 自信を持ってくださいっ! 今度は私も一緒に行きますからっ!!」

「……ぁい」

 がんばりましゅ。

 

 穂乃香は、俺がハイあっぱらぱーになってた後でも普通に接してくれた。

 ミミズ野郎を完璧に消滅させてから少々。正気に戻った俺はとんでもないやらかしをしてしまったと、酷く狼狽したが……。

「お下品で粗野なオイラを見せてしまった……。もうお婿にいけない……」

「きっと引かれてしまった……。嫌われちゃったんだわ……」

 嘆きながら、彼女の元にかえれば──

「漣さんっ! 約束守ってくれたっ! 帰ってきてくれたっ! 大好きっ!!」

 熱烈な抱擁で、情熱的に感謝の言葉をプレゼンとしてくれた。やっぱり彼女は天子様やったんやっ! こちらこそありがとうございますっ!!

 お互い雨でびしょ濡れの状態。穂乃香の体も冷えていた。だけど、触れ合っている間はとても──あたたかった。

 あと! 穂乃香のいい香りがした!! くんかくんか!

 

「なんですって!?今すぐに局長、副局長に連絡しますっ!!!」

 穂乃香さんと一緒に再突撃したら、おはなし! きいてくれたよっ!

 なんでやねん……。さっきはワイの話、聞いてくれへんかったやん。おかしいやんっ!! んごぉ!!

  

 ストーカーに追いかけられました。

 なんか不気味だったので、連盟に応援要請頼もうとしたけどできませんでした。

 追いつかれたら、ストーカーは変態さんでしたっ。危ない変態さんだったのでぶっ殺しましたっ!!

 そうしたら、変態さんは悪性個体にレベルアップしました。なのでまたぶっ殺しましたっ!!

 

  ざっくり纏めるとこんな感じの説明を局長達にする。

 「一応狼煙も上げたんですけどね……」

 「連盟の代表として心から謝罪します。穂乃香さん。本当に申し訳ありませんでした」

 「俺からも詫びさせてくれ……。申し訳ない。穂乃香」

  ??? あれれ?? 俺は? 俺のこと忘れちゃった? それとも見えてないの?

「大丈夫ですからっ! 頭上げてください! 私は平気ですからっ」

 恐縮した様子の穂乃香が、俺を無視するトップ二人の頭を上げさせる。

「異常事態とはいえこのような……。なんて無様な。漣君のところだったからよかったものの」

 あっ! 認識されてたっ! でも? なんで俺には謝ってくれなかったんだろう? おかしいね?

「漣、良くやってくれた。最悪の事態にならなくて本当に良かった。」

「あっハイ」

「今、長野地域全体で大規模な魔力障害が起きています……。これにより魔力通信が完全に遮断され、一部の魔力製品の稼働が停止しました。幸いなことに、うちの優秀なスタッフにより、もう少しで改善される予定ですが── 悪性個体の出現……。きな臭いですね……。通信障害のせいで確定ではありませんが、日本各地で似たような事案が発生しているようです」

「今回は漣がいてくれたからよかったが。低ランクの連盟員ならどうなってたか……。本部に要請を入れるべきだな──」

 

 はへ~なんか大事らしい。どうしよう……。オレもなんか意見とか言った方がいいのかな? でも何いったらいいかわかんねw。

「………」

 とりあえず難しい顔してた。とんちんかんなこと言って場を凍らせるの怖いんだもん……。凍らせるの得意なんだ! なんちって!  


 とりあえず事態が収束するまで、長野支部の連盟員は待機らしい。もちろん一般市民にもお触れが出た。

「「「ただいま~」」」

「ヴォッフ~」

 何やら大変な事態になっているような気配が漂うが──── まずは、みんな無事に帰宅できたことが喜ばしい。

 穂乃香と、もふもふ達には休んでいてもらい、パパッと食事の用意をしてしまう!

 みんな大好きカレーライス! 時間をかけるカレーは勿論おいしいが、短時間で作るカレーもさっぱりした感じでウマいのだっ!

 鼻歌など歌いながら、切って炒めて煮込んでルーを溶かせば────あら簡単っ!! みんな大好きカレーのか~んせ~い~だぁ~♪ 

 隠し味はハチミツと愛情ダゾッ。


「うんっ! とってもおいしいです♪ 食べ過ぎちゃいそう♪」

「良かった、良かった♪ 作った甲斐がある」

 わ~い褒められた~。作った料理を美味しいって言ってもらえると本当にありがたい。何も言わないで食べられるのは味気ないからね……。

 まぁ、「うまいうまい」だけでもちょっと違うんだけどね。作ってる側からすると……。感想が欲しいのだ! まずいって言ったら戦争だけど。


 楽しい食事も終え二人で片づけをしていると──

「これで終わりです」

「ほいっ。ありがと~」

 お皿ふきふき~♪ 食器棚にしまって~

 

「穂乃香~、先にお風呂入っていいよ~」

「ありがとうございますっ。それじゃあ一緒に入りましょう♪」

「!!ッ」

 皿を、落とすところだった……。

「……なんて?」

「一緒にお風呂! 入りましょう♪」

 

 ……へへっおもしれー女っ。


 あばばばばばばばばっ。

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