第17話 お買い物
「なんかしっくりきたの、あった?」
「う~ん、やっぱり、漣さんが最初に勧めてくれたメイス系ですかね……。本当は漣さんみたいに、刀とか剣が良かったんですけど……。私じゃ使えるようになるまで、いくら掛かるか分かりませんから」
「俺もそれがいいと思うよ。まぁ、俺の刀も我流だから威張れたものじゃないんだけど……。まぁとにかく──メイスでもいろんなのがあるし、しっくりきたのを選ぼう」
「はい!」
現在、穂乃香の装備を課金装備にするべく奮闘中。
連盟内の魔力加工した武具を取り扱っている区画にお邪魔している。
穂乃香はまだ、連盟に加入した際に提供される初期装備状態。
*初期装備=魔力加工もされていて悪くはない
なので、当初の予定通り彼女の課金装備計画を実行に移す時が来たのだっ!
パワーアップイベであるっ!
「この短めのメイスなんか振りやすいじゃないか?」
「う~ん。でも身体強化して振ると──うん。少し軽すぎますね」
思ったよりパワフル音をさせる彼女。重低音の素晴らしい風切り音だ……。
「ふ~む。思ったより穂乃香の身体強化が成熟してるっぽいなぁ~。とすると、そこそこ重くてもいけそうな感じか……」
「えへへへ~。頑張りました!!」(可愛らしいガッツポーズ)
う~ん。very cute!!
「!! ――漣さん! これ! これっ!! いいかもですっ!」
彼女が大変素敵な笑顔を浮かべながら――武骨なメイスをぶんぶん振り回している……。
なんというか……、非常にアンバランスな光景だった。
天使のように可愛らしい穂乃香が──
「ブン! ブン! ブン!!」と、かなり轟音の風切り音を出していて微笑んでおる……。
アレを受ければこの近辺の雑魚モンスターならワンパン間違いなしだろう……。
ワンパンウーマン……。
一応キープしておき、他のメイスも見て回ったが――先ほどの物以上にしっくりきたものはないとのこと。
武骨なメイス君に決定である。
魔力鉱石、高ランクモンスターの骨などを素材に使っているらしい。
なかなかの逸品ではないでしょうか! 無骨なメイス君!
「ありがとうございます! 蓮さん。わたしこのメイスすっごく大事にしますね!!」
この笑顔が見れただけで……お金以上の価値がありますともっ!! 金なんか気にならねぇよ!! ばっきゃろ~い!
このメイス君に魔力結晶を用いて、さらに恩恵を与える。これで魔力装備の完成。
ある程度、能力を限定することは可能だが……、基本はランダム。つまりはガチャだっ! そのものの運が試される……。
俺が持ちうる中で、かなり高純度のものを引っ張り出してきた。穂乃香のためだ! 抜かりはない……。
「爺さん。こいつで──頼む」
「──!! ほうっ! こいつはなかなか……」
ここで一番腕のいい魔力付与を行うことができる人物。なかなか厳つい
だが、
彼に任せれば悪いようにはなるまい。たぶん……。恐らく……。きっと……。
彼は、メイスの持ち主である穂乃香を鋭い瞳で一瞥する。
「あの……。よろしくお願いします!」
爺は一瞬で相好を崩した。
「お~おう。儂にまかせときんしゃい!! ぜ~たい、いいもんに仕上げちゃるからのう~♪」(ジジイの猫なで声)
………。
「漣」
彼は、次いで俺の方を向く。そして、厳かな声で告げる。
「失敗しちゃったらゴメンネ!!」
「はっ倒すぞじじい」
爺の態度はともかく、結果は素晴らしいものだった。
元々メイスが持っていた恩恵を引き上げた上に、魔力との親和性が飛躍的に上昇したようだ。
*魔力、属性魔力を纏わせる行為にプラスの補正がかかる
この結果には、三人ともにっこり、大満足。
*普通にカスみたいな恩恵がつく場合もある。例1、武器が光るだけなど
そこそこの金額が飛んだが……予想以上の恩恵がついたので安いくらいだと思う。
本当にラッキーだ……。虎の子を持ち出した甲斐があったというものだ。光らないでくれて本当に良かった……。
次は、防具なんだが──。
「穂乃香が気に入ってくれるかは……、その、わからないけど。実は、先に用意させてもらったんだ。このローブと、アミュレットなんだけど……」
ローブ効果は、俺のコートとほぼ一緒で、魔力的な守りや、環境に応じた体温調整、収納力強化など。穂乃香のイメージを伝え、彼女に似合う装飾を施してもらった。(ロープ白、アミュレット赤)
アミュレットは、この間のワイバーンの魔力結晶を加工し、首からかけられるよう細工した。アミュレットに魔力を流せば、自身の存在を偽装することができるものになっている。
*アミュレット=肉眼ではあまり意味を持たず、魔力感知の偽装効果が強い。
「穂乃香の誕生日も近いから、一応……その、プレゼントのつもりなんだけど。気に入ってもらえると……うれしい」
ローブとアミュレットを、恐る恐る彼女に渡す。不安から動悸が凄い……。
装備がプレゼントなのはやっぱりナシなんだろうか……やはり俺は、デリカシー的なものが欠如しているんだろうか!?
物はいいはずなんだが……。
「…………。漣さん」
暫く沈黙した後、彼女は静かに俺の名を呼ぶ。
俺はぷるぷる震えながら彼女に応える。
「あい……」
「わたしっ! とっっても嬉しぃ!!」
彼女は噛み締めるような声音で、俺に気持ちを伝えてくれる。
「ありがとぅ。漣さん」
彼女は、俺の贈り物を、とても大切なものなんだというように
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