第16話 幕間2

 トントン♪ ────トントン♪  


 リズムよく胸を軽くたたく感触がある。とても心地よく、ずっと微睡みに身を預けていたくなる……。

「~~~~~~♪」

「~~~~~~♪~~~~~~♪」


 綺麗な声? いや────歌が聞こえる。

 あぁ、なんてきれいな声と旋律だろう……。

 誰が歌っているのか気になり、何とか目を開ける。

 でも、視界がぼやけるていてよく見えない……。

 ただ──ここ最近毎日見ているのに──

 いまだに色褪せることのない美しい顔が──

「あっ、起こしちゃいました?ごめんなさい。眠っていたのに……」


「ほのか?」

 俺は彼女に膝枕されていた。ここは……家のリビング?

 前後の記憶がはっきりしない……。ただ──すごく、嫌なことがあった気がする。俺の本能が思い出すなと警告を出している……。

 (漣、この扉を開けてはいけない……)*本能君

「うっ!?」

 なにか……恐ろしものを口にさせられたような。この世全ての悪を煮詰めたもの口に放りこまれたような……。

 形容しがたきおぞましきものを飲まされたような……。

 ななななんんだっ! 急に怖気がっ!

「大丈夫ですから、もう少しお休みになられてください。連盟の方が悪乗りしたせいで少し体調を崩されたそうですから……。まだ顔色が良くないです」

「あ……ああ。でも、穂乃香も疲れているだろう? この態勢じゃ穂乃香が休めないよ……」

「私は大丈夫。心配要りません。だから──ねっ、もう少しお休みになって」

 彼女はそういうと、起き上がろうとする俺を留める。

 そして、リズムよく胸を軽く叩く。

 数分もしない内にまた、微睡みに沈んでしまう……。

「うた……とても、きれい……だった、よ……。 Zzzz~」

「ふふっ♪ ありがとうございます。おやすみなさい。漣──」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る