第12話 ささやかなパーティー
午前中はみんなでゆったりした時を過ごす。
穂乃香と一緒に、ふわもこ二名を捕獲して撫でまわしたり、これ見よがしに置いてあった将棋をやったりもした。
俺は、将棋にはかなり自信がある。地元じゃ【猪攻めの漣!!】なんて二つ名もあった。彼女の棋力を測った後、将棋の楽しさを教えてあげるつもり――だった……。
でも、ふつーに負けた。しかも大差で。
穂乃香は【居玉】のまま――俺の【銀冠】を容易く食い破り、あっという間に詰みまで持っていってしまった。『……参りました――』
ぐやじいよぉ……。俺の少ない取柄だったのにぃ……。おわぁ~ん!!
……今度、藤堂さんで憂さ晴らししよ。オレより弱い奴に会いに行く!
ソファーでぽけ~としていたら、手に細い棒? を持った穂乃香が座る?
なんじゃろな~、って思っていたら、彼女が自分の腿をポンポンして――
「??……っ!?」
これは!! まさかあれなのでは!? 知性体すべてに特攻を持つあのー!!
その短い棒を、耳につっこみ至福の時を与える「みみかき」なのではー!?
「えへへ~、お耳きれいにしてあげます! どうぞ漣さん♪」
俺は、すぐさま穂乃香の腿に頭を乗っける。
いつもなら、パパになった今でも恥じらいは拭えないが、耳かきならば話はべつだぁ!!
オレは、耳かきが大好きなのだ! アレはいいものだ。すごく心地がいい……。
小さい頃は耳かきのし過ぎで、よく耳垢栓塞になった……。病院に行くと、医者のおっかない先生がめっちゃキレてくる。それでもオレは、耳かきをやめられなかった……。生粋の耳かきジャンキーがオレナンダッ!!
やったぁみみかきだぁ♪ 嬉しいなぁ~♪
「わっ! ……びっくりです……。すぐに来ちゃいましたね~。耳かき、お好きなんですか~?」
ごそごそごそっ! 耳をほじくる音が響く。
「はぃ~、好きなんですぅ~」
あへ~、気持ちいいよぉ~。おみみとけりゅ~。
かなり気持ち悪いかもしれないが仕方ないのだ。耳かきに勝てる知性体など存在しない。そんなもんは、耳がない宇宙人だけだ。
人間に生まれて良かった。耳かきいい、人の生み出した文化の極みだよ。
それにしても、なんて耳かきさばきだ~。大変に気持ちがよい~。
「お耳、気持ちいですか?」」
「はいぃ~きもちいいですぅ」
俺の痴態はしばらく続いた。あふんっ。
昼を済ませ、穂乃香と一緒に家を出る。(アオ、ポンタはお留守番)
連盟に活動方針と、しばらく指名依頼を受けないことを告げ同意を得る。
任務完了。ヨシッ!!
穂乃香と一緒に、パーティの材料を求めて商店街を歩く。
目に映った美味しそうなもの、穂乃香の好物だというもの、多くの飲食物を購入する。ポンタのために高い肉も購入した。意外とグルメなので喜んでくれるだろう。
アオは、飲食物は口にしないので、精霊種用に調整された魔力酒を購入する。
*アオの好物。摂取すれば酒と同じように酔う
*飲み物ではなく、魔力を用いた加工品。精霊種ように加工してある。
食に並々ならぬ執着をもつ、
俺たち用にいくつかの酒も購入し、商店街をぶらぶらする。
*購入した商品はクランハウスに届けてもらえるようお願いした。
彼女は買い物中、とても楽しそうにしていた。店員さんとも笑顔で応対し、たくさんおまけしてもらっていた。……俺には、今までそんな事してくれたことなかったけど気にしないよ! ポンタはよく貰ってたけど……。
よく行く肉屋の親父など、かなり厳つい顔をしているのに好々爺のようになっていて気味が悪かった……。なんちゅー声を出すんじゃ、おどれは……。声のトーンを上げるんじゃないっ!
顔も良し! スタイル抜群! 甘い雰囲気が溜らない! と、話題沸騰中のいけ好かない仕立屋店長。偶然、そんないけ好かない野郎の店に入ってしまい、
俺の出番はなかった……。
一緒に買い物を楽しむ俺を見て、『信じられない……そんなちんちくりんでいいの? センス疑われちゃうヨ』みたいな顔をする
おまけにあの野郎っ!! オレの足の長さも見て!! 勝ち誇ってやがったっ! 許せねぇ! 万死に値する! 許されざる悪徳だっ!
確かに俺は――お前みてぇな立派な長いあんよ、装備してねぇよ!! 派手にムカつくぜっ!!
……せめて夜道に気をつけるんだなっ!! ぺっ!!
いろんな店を見て回ったが――最後に穂乃香の希望で魔力布と、魔力糸を購入した。
材料から大体の予想はつくが……、どうするのと? 尋ねると――
「内緒です♪」
とてもかわいらしい返答が返ってくる。
う~ん、とってもぷりちー。
おいしそうな料理をテーブルいっぱいに並べる。
おしゃれなグラスにシャンパンを注ぐ。
「では――穂乃香の歓迎を祝して~、乾杯!!」
「「かんぱ~い♪」」
「ヴぉっふ~♪」
少数で行うささやかなパーティー。
それでも、楽しかった…。
穂乃香は、酒になれていないのか、飲んですぐに顔を真っ赤にしていた。目をぐるぐるさせながら、俺や、ポンタ、アオに抱き着いてまわる。
アオは、魔力酒でぐでんぐでんになり――大きくなったり、小さくなったりを繰り返して笑っていた。
ポンタは、尻尾をぶんぶん振り回しながら肉に食らいつく。
最後にはみんなで一緒になって眠りについてしまう。
今日のパーティーは特別な日になった。
俺にとって――決して、忘れられない宝物。
穂乃香にとってもそうであるように祈り――眠りにつく。
「れんさんありがとー、すっごくぅ、たぁしかった~」
すぐそばで、最後にそんな声が聞こえた気がした。
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