第8,5 藤堂傑視点

「ふぅー」

 とりあえずうまくいったな……。


「まぁ漣はあの性格だから、穂乃香が頼み込めばどの道引き受けたんだろうが。」

 ちょっと、強引だった気もするがまぁいいだろ。


 それより、胸に引っかかったのは別のこと……。

 おちゃらけた面をよく見せるせいか、あいつがあんなに自分の性質を気に病んでいたとは知らなかった……。


 漣と初めてこっちで会ったとき、あいつはひどく憔悴していた。 何があったかは分からねぇし、何より本人が語りたがらねぇ……。

 だがまぁ、筆舌には語りがたいあったことは、想像に難くない。

 *答え=クランメンバーから邪魔って言われた

 とりあえず、あいつはいろんな意味で有名だったから、俺の独断で速攻首輪をはめたが────


「だけどよぉ、あんなに傷ついていやがるなんて……。可哀そうによぉ……。」

 俺の目に涙が滲む。

 あれだけの力を持つ奴が、他者との関わりに、あんなチワワみてぇに怯えちまって……。


「まぁでもこれからは穂乃香がいる」

 あいつなら漣の傍にいてやれるし、穂乃香にもきっとあいつが必要なんだろう。

 だから漣、頑張れよ……。俺ぁ、応援してるぜ。


 しかし、大丈夫かなあいつ?


 本人から『どうしても』って要望があったのと―― 漣の人格面を考慮した結果だが……。やはり、一抹の不安は拭えない。

 まぁ、お互い大人だしこんな時代だ……。いちいち口を出すのも野暮ってもんだ。


 ただなぁ~、あいつ気がするんだよな。

 天然記念物ルビを入力…なんじゃねぇか?


「まぁ、なるようになんだろ――」


 


*最後にそう呟いて、藤堂傑は部屋を後にした。







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