第2話 長野
*第一次魔力災害の後、日本の地形は変化した。国土面積が大きく上昇している (また、本州と離れていた北海道、四国、九州、他幾つかの島と結合した)
あの忌まわしい事件から、三ヶ月ほど経ちました。
現在は七月、夏真っ盛り。とてもあつい。
私は今、ご縁があり────長野を拠点に生活しています。
長野は素晴らしい土地です。魔力災害から十年。今や長野は食料確保の要です。
私はこの地で、第二の人生をスタートさせたのです────
土属性持ちが舗装してくれたのであろう、綺麗で広い道を大きな影が疾走する。
只今、長野北部の大規模農業地帯近辺をポンタに乗り爆走中でござーい。
「サラマンダーよりはや~い♪」(※実際に存在する)
ポンタの背に乗りながら、古ーいネタを口にする。
一緒に乗っているアオがしかめっ面で口を開く
「ぼく、あれあんまり好きじゃないなぁ。主人公がかわいそうだよ。」
「全く同意。救いがねぇよ。N〇Rは嫌じゃ。脳が破壊されちまう…。」
適当な事を話題にして、アオとの会話を楽しみながら、ポンタの様子を確認する。
「~~~~~~~♪」
う~~ん、とってもご機嫌ですねぇ~。走るの大好きだもんねぇ。う~ん、とってもHappy♪だね!
ポンタが嬉しいと俺もうれしい、Yay!!
暫くの間はポンタとアオとの会話を楽しみながらのドライブだったが、アオが異変を感じとると、コートを引っ張り知らせてくれた。
*精霊種は敵意などの悪感情や、環境の変化に敏感。高性能レーダー。
「漣、ちょっと大物かも。魔力ちょっと強い。空飛んでるね…。しかも、この感じからすると火属性持ち……かな?」
「ありま。そりゃ予想外だぁねぇ~。しかも火かぁ~」
思わずため息が出る。気を付けて対処しないと火事になっちゃう…。
「依頼主からの話じゃあ、ここら辺はあんまり強い個体いないって話だったんだけどなぁ。龍脈から零れた魔力につられたかね?」
*龍脈、地球を駆け巡る高密度の魔力。稀に地中から噴き出す。
「たぶんね~。後ろとられてる。速さはトントン。あっちもまだ、余裕ありそうだけど。上から追ってきてる。敵意はビンビンだよ……」
うんざりした様子で、アオが教えてくれる。
「ヴォフ?」(どうする?)
「ふむ…」
ポンタの本気はこんなもんじゃない。だから、追いつかれる心配はしてない。問題はどこで対処するか。
このまま距離キープして、開けた場所まで誘導するか? でもその間に、癇癪起こされて火をまき散らされでもしたら本末転倒だしな……。
「…ようしっ!!もう殺っちゃおう!!奇襲作戦じゃいっ!!」
叫ぶと同時にアオを脇に抱え、最小限の魔力で身体強化を施しポンタから飛び降りる。
脇でアオを潰さないように気をつけ、衝撃を殺しつつポンタの方を見て思念を送る。
(ポンタ、そのまま走って気を引いてくれ────)*思念
ポンタは顔を一瞬こちらに傾け、軽く頷づく。
そして────雄叫びをあげながら、凄まじい爆走を始める。
「ヴぉふぉぉぉぉんっ!!!」
ポンタが全身に魔力を漲らせて走ってくれている。速度、魔力圧、共に今までの比ではない。気を引くには十分だが。
「アオ、どう?奴さん、ポンタにつられそう?」
脇から這い出て、背中をよじ登っているアオが答える。
「う ん。よいしょっと……。ポンタの魔力と走りにつられ……て! こっちに 全く 気付いてないと思う~」
「ナ~イス。いいね。丁度、俺の感知領域にも入った」
思ったより飛んでいる位置が高いな…。上空8000m位か?
「視認した瞬間、魔術で仕留める……かな?」
「へぇ~なに使うの?」
肩に到着したアオが問いかける。
「魔力弓かなぁ」
「りょうか~い。じゃあ、ぼく離れてるね~」
アオは肩から飛び降り、短いあんよをぴょこぴょこ使いながら距離をとった。
とってもぷりち~だ…。
「ふー。」
息を吐いて意識を集中させる。蒼い魔力が弓と矢を形どる。
弓を構え、矢を番える。
モンスターの魔力を感知することで大まかな距離は把握できる。
向上させた視力で視認した瞬間、矢に特注の属性魔力を叩き込んで間髪を入れず放つだけ。
放てば視認した対象目掛けて飛んでいくよう魔力を編んだ。一瞬で済む。
狙いを定め、姿を見せるのをじっと待つ────が
ポンタを追っていたはずモンスターが突如ルートを変えた
っ!? 真っ直ぐこっちに向かって飛んできやがる!!
「漣!!」
「わかってる!!」
何故こっちに来る? バレた? んな馬鹿な!! ほんの小さな魔力行使だぞ!
こんなものに気付けるほどの感知能力を備えている? ありえんだろ……。
感知能力に長けたアオ(精霊種)でも無理だわい! 飛行種でとんでもなく探知に長けた種???
なに? ドラゴンさん?? 幻想種様?? だあぁぁっ畜生っ! 考えが纏まらん!!
考えるのは後だ! やることは変わらねぇ────なに?
「違う!!!ワイバーンだ!!!!!」
叫び声が響く、その一歩前に俺も気が付いた。
「おいおい…魔術、弾いちゃうじゃん…。」
魔力を霧散させ、構えを解くと同時にワイバーンの姿を視認した。
バハムートラグ〇ンの話なんかするんじゃなかった……。変なもん呼び寄せちまった。
*純魔術…媒介となる物質を使わず、すべて魔力で構築した魔術のこと。自分の魔力に属性付与して、放出するだけでもかなり強力な魔術となりうる。(使用者の魔力技能により、威力は変化する)
*ワイバーン
:準幻想種(ドラゴン亜種) ランク:A-~A+ 魔力属性・魔力性質:個体により変化(どんな属性でも持ち得る。性質についても同様)
:竜種全般は、非常に強い魔力耐性の鱗を持つため、純魔術とは相性が悪い。勿論、ワイバーンにも効きづらい。鱗の下に耐性はないため、物体を媒介にした、魔闘術が有効。
:本来、魔力高密度地帯や、魔力濃度の高い山に生息するモンスター。漣がいる地点にはまずいないため、アオの感知能力でも見落としてしまった。
:知性を持ち人間に友好的な個体も存在する。人語を解する個体確認済み。(流暢な関西弁を話す個体がいるらしい…)が、今回別のようだ。
:高度な飛行能力を有し、口から非常に強力な魔力放射を行う。(属性付与あり)魔力を込めた雄叫びは、恐怖を煽る。
:個体にもよるが4~6メートルほどのサイズ。
:準幻想種と幻想種の差は、天と地ほども離れているため同一視してはいけない。
*後書き
読んでいただきありがとうございます。
「ウォッフ!!」(走るの楽しい~!!)
「応援よろしくお願いしますぅ~」( ノ;_ _)ノ
作者
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