ショッピングモールと大男

大型ショッピングモール。皆さんは真っ先にイ〇ンモールを思い浮かべると思う。

休日に家族で行けば大盛り上がり間違いなし。

買う予定の無いものを買ってしまったり、フードコートでたくさん頼みすぎてお腹が苦しくなったり。

そんな平和な様子が浮かぶだろう。


しかし今到着したショッピングモールは平和とは遠いようだ。


「はぁはぁ」

「「はぁはぁ」」


「着いたな...」

「「はぁ..はい...」」


「扉に鎖...さっきのモンスター対策か。」

「「中に入れませんね...」」


ショッピングモールの入り口はシャッターが閉まっており、その上から鎖が繋がれていた。


「裏口がないか、探そう。」


裏口または駐車場につながる道を探せば、警備員室がありそこには内線があるはずだ。

正面玄関の裏に回り、車が通れるだけの道を見つけた。


「ガルルルルル....」


お約束かのごとく、待ち受けていたのは先ほど車の上に乗っていたモンスターより少し小さめの獣が居た。


「やっぱりそう簡単に行かせてはくれないよね」


「「なんで冷静なんですか!!」」


「とりあえず、対話出来るか試してみよう。」


「おい!そこをどいてくれないか?」


いつもより大きめの声で小さな獣に語り掛ける。


「ガルルルルル....」


「無理そうだね。」


「「無理に決まってます!!逃げましょう!」」


「うーん、逃げたらさっきの大きいのがきそうだし、どうにかこいつを何とかしよう。」


サイズ的にゴールデンレトリバーくらいだし、本気で戦えば勝てる。

僕は小さい頃剣道と空手をやっていた経験があり、多少なりとも護身術は使える自信があった。


「ガルッ」


小さな獣、ぱっと思い浮かんだモンスターの名前。ウルフ。これからはそう呼ぼう。

ウルフがこちらに向かって歩いてきた。

口からよだれがだらだらと出ていて、これから食べますよ。という感情がむき出しだった。


「ほら!」


僕はカバンの中にあった魚肉ソーセージをウルフに向かって投げ、様子を見ようとした。


「バクッバクッ」

「ガルルル....」


「ダメそうだな。」

「仕方ない。戦うぞ!」


ドンッ!パンッ!


ウルフの後ろから銃声がなった。


「キャイン!」


ドサ...


「「おお、危ないところだったな兄ちゃん達。」」


「あなたは?」


「「とにかく、ここは危ないから中へ来い。」」


後ろから大きな銃を持った大柄の男が出てきて僕たちにそう言った。

助かった。という感情より違和感があった。


どうしてこんなに慣れている動きをするのか?と。

大男に連れられ、裏口の近くにある警備員室に案内された。


「ふう。正面玄関はあの通り誰も入れないから、裏口のここだけ厳重に守ってるんだ。」


「で、よくここまで逃げてこれたな。たどり着く前に死んでいくやつがほとんどだってのに、お前らは大したもんだ」


「先ほどは助けて頂きありがとうございました。」

「「あ、ありがとうございました!」」


「なに。困ったときはお互い様よ、こんな状況だしな。人手はあった方がいいからな。ところでお前らどこから来た?」


「〇〇駅から来ました。」


「なに?〇〇駅だと?あそこには大きな黒雲があっただろう。本当によく来れたな。」


「黒雲...」


警察官が逃がしてくれる前に見た黒い雲。それを言っているのだろう。


「すいません突然の状況だったためあまり理解出来てなく。その黒雲?について聞いてもいいですか?」


「ああ。俺もそこまで詳しくはないが、話そう。そこに座れ」


警備員室に置かれた長方形のテーブルに丸椅子があり、大男が奥の丸椅子に座り僕とあいりちゃんは手前の丸椅子に座った。


「ん-。どこから話したもんか。朝電車乗ったか?」


「はい。通勤だったので」


「そうか、じゃあ分からないか。」


「分からないというと?」


「まぁ聞け、お前たちが乗っていた電車は8時ちょうど発の電車だ。」


大男は僕たちが乗っていた電車の時間を言い当てた。


「はい。その通りです。」


「でな、8時10分頃に空が黒くなったんだ。」

「んで、丸い雲が色々なところへ飛んで行った。」


「元々は大きい雲で、それが拡散された?ということですね」


「あぁそういうこと」

「俺も見たときは信じられなかったがあの雲から化け物が出てきてよ。近くに居た人たちを片っ端から食べて行ったんだ。」

「もう夢かと思ったね。でも現実だった。生々しい声に音だった。」


「それからはもう一心不乱に逃げた。幸い車通りが多くてバイクだった俺は逃げやすかった。」

「どこに行くにもこんな状況じゃすぐ回りはパニックになる。だからまず落ち着ける場所と思ってここに来た。」


「なるほど。僕たちが電車に閉じ込められていた時外はそんなことになっていたんですね。」


狭い部屋の中で昨日までの現実とはかけ離れた話を聞いていた。

ふと、部屋の壁に設置されていた時計を見た。


12時15分


目の前のことに集中していると時間の感覚を忘れてしまう。いつの間にこんなに時間がたっていたんだ。


「あの黒雲から化け物が出てくるのには法則がある。」

「法則...?」


「1時間に1体しか出てこない。」


「さっき小さいやつが目の前に居ただろ。あれは12時に出てきたやつだ。」


「でも近くに黒雲はなかったような...」


「それが厄介なんだ。黒雲が中心で、その周りからはどこから出てくるか分からない。」

「俺が分かってるのは、黒雲から遠ければ遠いほど弱い化け物が出てくるってこと。」


「それで個体差があるんですね。」


「幸いここのショッピングモールは黒雲から遠いから一応安心していいぞ。」


「「だから駅から来たって言ったとき驚かれたんですね。」」


「おう。お嬢ちゃんえらい肝座ってるな。こんな状況なのに冷静たぁ」


「「近くに信頼できる人がいるからだと思います。」」


「へぇ~。」


「な、なんですか」


「いいや。なんでもねぇよ!がはは」


あいりちゃんとはさっき知り合った関係だが、どうにも懐いてくれたみたいだ。

正直女の子の相手なんてしたことないからどう接したらいいか分からないが、今はいいとしよう。


「で、話続けるぞ。」

「お前ら疑問に思わなかったか?なんでこの時代で俺がこんなもん持ってるかって」


大男はスナイパーライフルを持ち出した。


「それは思いました。でも軍人の方なのかと思って触れてませんでしたね」


「俺はただの一般人だよ。これはな、買ったんだ。」


「買った...?ショッピングモールに銃なんて売ってるんですか?」


「いいや、違う。着いてきな。見せてやる」


大男はそういうとショッピングモールの中に入っていった。


「「行きましょう。」」


「あ、ああ」


呼んでいるような感覚があった。

恐らくそれは間違っていなかっただろう。

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