第3話 ほんの僅かの異変
今日もいつもと同じのはずだった。
しかし、先生が朝食の席で、今日は医師が健康診断に来ると宣言した。確かに、たまに健康診断で医師が来ていた気がする。
「どうしようかな俺、虫歯とか…あったりして⁉︎」
「…お前が甘い物を食べすぎなんだよ……」
リックとジーノがコソコソと言い合っている。
レオンは一番なので最初に行ってしまった。
ネロは大人しく僕の隣に座っている。
「リック!こっちにおいで!」リックが呼ばれたようだ。ジーノは大袈裟に泣くフリをしてリックを見送った。レオンは戻ってきていない。今日は健康診断が終わったら自由だから遊びに行ったのだろう。
「ネロ!君の番だよ!」ネロが呼ばれて黙って立ち上がった。部屋を出て、そのまま行ってしまった。
「なーノア!健康診断って甘い薬飲むやつだよな⁉︎俺楽しみなんだあれ!」
「そういえば薬も飲むんだったね」
シシシッと楽しげに笑ったジーノはまもなくして呼ばれて元気に部屋を出ていった。
「ノア!君で最後だよ!」
呼ばれたので、僕も大人しく部屋を出る。
呼ばれて入った部屋には白衣を着た男がカルテを見ながら待っていた。
「失礼しまーす…」僕はちょっとだけ声を潜めて入室した。
「……あ」「あ?」僕が首を傾げると、
「あらー!!!大きくなったわねー!!何ヶ月ぶりかしら?元気にしてる?」
「え、あ、あの、おとこの…人では…⁉︎」
「ぁに言っちゃってんのよ!アタシはオネエよオネエ!」そう言って逞しい体を見せつける医師。
「は、はぁ……」
それで?と医師は僕の健康状態を確認しながら、足や腕を曲げ伸ばしさせた。
「…問題は…なさそうね。じゃあ、お薬飲んでもらおうかしら」手渡されたのは一つのカプセルだった。赤と白で極々普通だ。水の入ったコップも渡され、そのカプセルを口に含む。カプセルが少し溶け、甘い味が広がる。しかし、その中にどうしても苦味を感じる。前飲んだ時もこんな味だっただろうか。水で押し流すように飲み込んだ。
「どう?どんな味がするかしら?」
「甘かったです。でも、すぐに飲み込んじゃいました。」僕は医師の質問に適当に答えて、部屋を出た。もう一度水道で口をすすぐ。苦味は完全になくなった。なんだかめっきり疲れてしまった僕はぼうっとする頭で部屋に戻り、そのままベッドに倒れ込んでしまった…
「……………」
僕はいつのまにかゴミが散らばり、ところどころボロボロになっている汚らしい部屋に立っていた。
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