432.5 手記15
「ねぇ、もうクリスマスだわねぇ」
ベージュのニットにタイトスカートは、どこか
そういう私も、主任と同じ、青いネックレスをしている。忘れたくないからだ。どうしても。
「雪でも降ればいいけど、今日は無理ね」
「降らせましょうか?この間、……趣味程度なんですが、エリアBの館内の天候管理システムを作ってみたんです。遊びですけど」
「そんなこと出来るの?流石リエナね」
ホログラムモバイルをタップして、ロビーに粉雪を降らせる。
「少し、温度だけ上げましょうか。あったかくも出来ますけど」
「そんなことまで出来るの?流石私のリエナ。でも大丈夫よ。冷たい雪も楽しいから」
「サブロー君がやってくれたのよ」
「ツリーですか?器用そうですもんね、彼」
「どうかしら……一生懸命よね」
少しずつ降り積もる雪を踏み締めて、ツリーに手を伸ばす。
「綺麗でしょ。それは私が作ったのよ」
少し得意げな
「ブレイズレイダーの瞳のミニチュアよ」
「……今日、試乗ですもんね」
何故私が選ばれなかったのだろう……もしものことがあったら、
「
昔の機関に比べて、今はだいぶ、色々なことが良くなっていると聞く……。
でも、こういうところが、私は納得出来なかった。
「裏方ばかり。……ごめんなさいね」
「いえ、……今は
「ありがとう。貴方の瞳もね」
「うわー!!綺麗ですね!!!」
国家警察の白ジャケットを、搭乗用に特殊加工したスーツ。
三島主任の……遺族。
「サブロー君、ツリー、ありがとね!」
「リエナ……さん?」
「何でもないわ。搭乗、気をつけて」
「ありがとうございます!!!」
私はこの子を主任と同じように愛している
「ロビーの中に雪なんて、考えつかないですね」
さらりとそんな風に言うこの子を、私は死なせたくないのに……いや、決めつけてはいけない。
私はオーナメントに映る、自分の瞳を見つめた。
それじゃあ、と言って、彼が立ち去ろうとして、まつ毛に雪が触れる。
「待って!」
「はい、なんでしょうか?」
この子の瞳が今、何色なのかわからない。
「死なないで。……——絶対に」
彼は小さく頷くだけだった。
「大丈夫大丈夫!」
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