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そうちゃん、……とライさんさ、大丈夫なの?……ずっとここにこもって、艦長の仕事だって小松こまつさんがやってるみたいだしさ」


 そうちゃんは、キャスターを転がして、少し離れてしまった。


 亜空間倉庫にそびえ立つ、コズミナルエンペラーを見上げる。


 紺碧こんぺきの夜空みたいな空間に、ブラックホールみたいに存在する闇。


 シュウジは格好いいと言ってたけど、アタシは怖くなる。


 新しい力は安全とは限らない……


 何度も心が潰れそうになったからだ。


「みっちゃん、エンペラーアレってね、古代のセクション墨田にった、ランドマークツリーと同じ高さなんだよ。知ってる?」


「なんか……白いタワーでしょ?今のセクション墨田のランドマークツリーはカラフルだし、高さも30000メートルだけど」


 新大久保の高い場所から見えるそのタワーは、人類のシンボルとしてどんどん高さを増し、IOP消失の追悼と祈りを込めて、毎晩オーロラみたいに輝いている。


「今はあの大きさだけど、どんどん進化する。HyLAハイラの技術はね。ヒト自体も。それって凄くかっこいいでしょ?」


「でもさ……」


「大丈夫、分かってるよ」


 なんで、こんなに無気になるのか、自分でもわからない。……イヤリングを付けてくれば良かったと思う。

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