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「あのさ……」


 ゲーミングチェアから起き上がって、アタシは飲み終わったコーヒーをサイドテーブルに置いた。


「アタシって何?」


 そうちゃんは、なぜか驚いたようにこっちを見ている。


 紺碧の星空が後ろに瞬いて、そうちゃんの顔がよく見えないけど、少し笑ってるように見えた。


「みっちゃん、そういうことさ、あんま言わないほうがいいよ。しかも真面目にさ」


「な、なんで?」


「わかんないなら、まぁいいけどさ」


「うわ!」


 そうちゃんはゲーミングチェアのキャスターを転がして、アタシの椅子にぶつけてきた。


 そして、小さい頃、シュウジとアタシにしてくれたみたいに、てっぺんをぽんぽんとしてくる。


「心配してくれてるんでしょ?みっちゃんもシュウジも」


「さ、幸子さちこだってっ」


 だから送り出してくれたんだと思う。


「な、仲間だもん」


「俺も同じ気持ちだよ」


 私が心配してた筈なのに、そう言われて、ほっとしてる自分に気づく。


「誰かが苦しかったりするのは……嫌だよ」


 そうちゃんが沢山苦しんだことも、たぶん……今も苦しいことは分かってる。


 だから、こんな気持ちはアタシの独りよがりだ。


 ……それでも。


「分かってるよ。それに、家族でもあるからね」


 約束のない絆はいつまでなのか……わからなくて苦しい——

 

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