384.5 手記11
「どうかしました?
エリアBの窓には、青が映っていた。
コバルトブルーの海と空。
ところどころに植えられた緑が、ここが基地内であることを忘れさせてくれる。
「なんでもないわ。迷子にならないでね、
「ハ、ハイ!……また拡張したんですね、ここ」
「そうなの。母艦の修繕もほぼ回復。また月に行けるようになるわ」
「わァ……行ったことないんですよね、俺。月って」
ベージュのニットがよく似合う
「……いいのよ。とても静かで美しい場所だわ。
月に隔離されているうちに、大事なものを失ったのだから。
俺で良かったら……、と言いかけて、薬指に光るプラチナに拳を握る。
そう思った。
「俺は……なんかこう、結構平気で。もう……」
「嘘つきね」
「
無機質なドア。
それでも中からは
「お、お邪魔します」
そこは女性の部屋とはおよそ思えないくらい、機械だけに埋め尽くされた部屋だった。
「すごく精密に出来てるわ、これ。大変だったでしょう?」
「そんな……そうでもないですよ」
そんな風に言ってしまうサガよ。本当はうん、もの凄く大変でした。
「出来そうですか?」
装甲用シリコンの配合と製作。
拡大した場合、配合が同じで上手くいくとは限らない。
「パターン分析を何通りか行ってね。そうすれば」
「
IOP消失後、テクノロジー復興の核。
人類の希望。
「ありがとう。手伝ってくれる?」
「もちろんです」
俺ひとりいなくても、強き力は何度でも立ち上がる。
「……そういえば……
「……あの人、いつもいつの間にかいなくなるんですよね」
「本当だわ」
「
冗談っぽく、流されてもいい。
けど思いのほか真剣な声が部屋に響く。
「出来ないの」
「……
「艦長も主任も、私には大事な人だった」
変わってしまった、と聞いた
「
気休めだ。
「私は何も失っていないの。夫も。子どもも産まれたわ」
失っていないなんて、本心じゃない。俺も同じだから。
無機質な、機械だけの部屋——
「これが……私の罪」
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