377

「リエナさん、真珠保管室の見学はどうなりました?」


 そうちゃんが何か気づいたみたいに、早歩きで聞いた。


しよ」


「どういうことですか?」


「アナタたちは月に離脱」


「リエナさん……俺がスターノエルで出ます!」


 サブローの声に、リエナさんが足を止めた。


「一人でやらせないよ、サブローさん」


 シュウジがサブローの腕を掴む。


「ライさん……関野せきの艦長の指示よ」


「待ってください!」


「ディストレスの出現状況に酷似。或いはIOP消失の再来。純之助じゅんのすけ幸子さちこさんを頼む」


「ちょっ!」


 そうちゃんがホログラムモバイルの何かのデータを見ながら、アタシを引っ張って足を速めた。


「エリアBを放棄するつもりですね?」


「場合によってはね」


「諦めるつもりはないけどなぁ!!!」


「ライさん!!!」


 サファイア色のHyLAハイラジャケットに着替えた関野せきの艦長が、水素針すいそしんで通路を破壊した。


「君たちは真っ直ぐ母艦に走れ!」


「テストも無しで、無茶です!」


「無茶だと思うか?サブロー」


「……いや」

「だったら走れ!」


「……死なないでくださいよ。行こう、みんな!」


 アタシはイヤリングを付け直した。


 ……声が、聴こえる。


「小松、お前も最終チェックをしたら離脱だ」


「でも……」


「いいんだ、俺は罪人なんだから」


 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る