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 会議が始まった。


 司会進行のエリアB副所長のリエナさんという綺麗な赤い髪の女性の説明で、東京海底谷トーキョーキャニオンの最新部に壊れた海中神殿があったことや、真珠が発見されたことが説明されていく。


「ミカ」


 部屋が暗くなり、アタシたちが初回に探索した映像が流れる。


「ねぇミカ☆」


「えっ」


 小声で幸子さちこがアタシを呼んでいた。


「ちょっ、今会議中……」

「これ見たじゃん」


 確かに、第一回の探索のあと、HyLAハイラ-Firstファーストのアタシたちは何度もこの映像を見た。


 けどアタシはこんな風にふざけるのはドキドキしてしまう。


「ちゃんと見ようよッ」

「えー……初めのパートは同じってサブロー氏言ってたよ☆っていうかさ、中庭の紅葉、キレーだったよね。あれ、Firstファーストのスタッフさんたちが植樹したらしいよ」


 ってことは母もやったのか……って違う違う、集中集中!


「っそ。ほら、ちゃんと聞こうよ」

「まだ同じコト言ってるもん。いつでも張り詰めてちゃ疲れちゃうしさ」


 そうかもしれないけど……。


常夏とこなつもいいけど四季がね、季節を感じることが心にいいみたいだからなんだって。私秋生まれだから嬉しかったんだ」


「まぁ確かにね……」

「あ、ミカ、このあと説明に入りそうだよ」


 なんだ、幸子さちこちゃんと聞いてたんだ。

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