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「炭酸カルシウムとタンパク質……本物の真珠と全く一緒だな」


 後ろの席に座ったジュンが覗き込んで言った。


「そうなの?っていうか何で知ってるのよ」


「魔王と言えば財宝だろう。宝石に詳しいのは当たり前と言えば当たり前だ」


 そうなの?


 ジュンを疑うわけじゃないけど、アタシはワールドネットワークチャネルで真珠の組成を検索して、HyLAハイラの資料ホログラムと並べた。


 少しの誤差はあるとして、確かに全く一緒。


 アタシたちが持ち帰った真珠は……ただの真珠。なんか悲しいような、良かったような、複雑な気持ち。


「綺麗だね、あの真珠」

「ねー☆」


 両隣に座った幸子さちことロボちゃんのキラキラした瞳に、ちょっと救われるけれど。


「まぁ、ただの真珠にこれだけのスタッフが集められることなんてないと思うし、ディストレス攻略に役立つ何かが分かった、ってコトなんじゃないかな。そうそう、俺もちょっと発表の準備が……」


「無いって聞いてるよ、サブローさんから」


 前の席から立ちあがろうとしたそうちゃんを、シュウジが座らせる。


「……みっちゃん、シュウジに何とか言ってやってくれる?」


「シュウジ、そのまま押さえておいて」

「良くない流れだなぁ……」


 確かにこれからのこと、良くない予感がしていた。

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