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 受取って貰えないならいい。


 最終的には、そういう気持ちでいた。


 けど9月19日。


 幸子さちこからの反応は無かった。



「ありがとうって言われるためにやったの?」


 久々に二人きりになった弟はなかなか辛辣だ。


「違うけど……」


 テレビのニュースには、ハピたんの生誕祭が成功したというニュースで溢れていた。


 美しい菊の花びらクリザンテームが画面の中に舞う。


「けどメッセージくらいさ……」


「まだ帰ってないんじゃない?部屋に」


 確かめてはいない。知るのが怖かった。


「シュウジは、何あげたの?」


「お団子の球断器だよ」


「は?何それ」


「ほら、前に幸子さちこさん、僕たちにお団子を作ってくれたじゃんか。それ以来、お団子作りが好きみたいだからさ」


 そういうところかもしれない。アタシが間違っているのは。


「まぁ幸子さちこさんって、ちゃんと想いに応える人だと思うから……時間がかかるんじゃない?」


 シュウジに、そんな風に言われたくなかった。


 でもそれをシュウジにぶつけるのは違う気がして、アタシは黙った。


あねは、猫の本をあげたんだよね。あねの好きなやつ」


 忙しい幸子さちこに、アタシはなんでそんなものをプレゼントしようと思ってしまったんだろう。


 幸子さちこがカスタネットをくれたのは、きまぐれだったかもしれないのに。

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