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「なんだ、二人とももう食べ終わったんだな」


 玲鷗れおんが大盛りのうどんと綺麗なお盆にコーヒーを4つ乗せてやって来た。


 魔王は焼き鳥と……パフェなんて持ってる!


「ちょっ!ジュンそれ美味しそう!」


「はちみつパフェだ。鳥の塩焼きと、甘い、しょっぱい、甘い、しょっぱいのループの完成だ」


相良さがら君、最高だね」


「どうも」


 コーヒーを貰い、ひと息つく。今度絶対食べよう、はちみつパフェ。


 恋か……強いて言うならアタシはいくつかの物語に恋をしていたと思う。


 寝ても覚めても気になって、登場人物たちが幸せだと、私も嬉しい。


 ……でも悲しい出来事が続いて、運命に巻き込まれて……いつしかそんな感覚忘れていた。


 でも日々は少しずつ良くなってく。


 何かにときめく時間が、また少しずつ増えていったらいいな。


「……ひと口食べるか?ほっしー、ノーマン」


「大丈夫、お腹一杯だし!」


「私、食べたことある。美味しいよね、はちみつパフェ」


「そうなの?」


 今度絶対食べよう、うん。


「……ん?何か聴こえない?」


 アタシの問いに、リディアが天井を指した。


 濃灰の岩肌の隙間に、いろんな色の鉱石がキラキラ輝いている。


「えっ」


 音楽が降りてくる。


「朝とね、お昼と夜。要塞の中反響するから、音楽がかかるんだ」

 

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