薄明のハイドロレイダー

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「糸井（いとい）さん、元気！？」

　アタシは体の力が一気に抜けた。

「はっ？宗（そう）ちゃん、何言って！？」

「は、はい！元気です！！！」

　メインモニターの向こうのロボ菜（な）ちゃんは、深呼吸して操縦管をしっかり握っている。……けど眼下のブルーホールは否応無しにロボ菜（な）ちゃんのレイダーを飲み込み続けている。

「このIOP跡地の水深はたかだか3000メートルだ。糸井（いとい）さんのイリディセントレイダーはH（ハイドロ）MW（マイクロウェーブ）の影響で万が一何かに攻撃されてもおそらく暫（しばら）くは無事だ。落ち着いてサルベージしよう」

　宗（そう）ちゃんはブリッジのサブモニターをいくつも展開して、イリディセントレイダーの構造図を分析し始めている。

「……レイチェル・グレイ、モーリス・ブランシュ、着艦は中止、その場で待機。雨沢（あまさわ）、霧谷（きりたに）、志村（しむら）は艦橋各配置に付け。その他スタッフは緊急事態に備え、サルベージ手配」

　忙しなく通信機を操作していた篠坂（しのさか）先生はそれだけ言って、艦橋を去ろうとした。

「どこに行くんだ、あんたは教師だろう？」

　篠坂（しのさか）先生はジュンの手を振り解いた。

「相良（さがら）、星ヶ咲（ほしがさき）、鑑原（かがみばら）、キュロスは艦内仮眠室待機、命令だ」

「……ここにいます」

　幸子（さちこ）が立ち塞がった。

「……好きにしろ」

　何も出来ず、アタシは幸子（さちこ）の手を握った。