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 HyLabハイラボの研究者は、ほとんどの人がHyLAハイラのロゴが入った黒いレザーのライダースジャケットを羽織っているけれど、中は思い思いの格好をしていて、思いのほかアタシたちは注目されなかった。


 というか、みんなモデルみたいにお洒落……。


 研究者は周りにあまり興味を寄せないと幸子さちこが言ってたけど、それぞれ、自分の世界が確立してるってことなのかもしれないけど、単に地味なアタシに興味が湧かないのかもしれないと思いながら、なんとなく負けた気持ちでテーブルに着く。


「どうした?」


「いや別に」


 なんだか、自分を変えないジュンすらもお洒落に思えてきて取り残された気持ちになったけど、食べ慣れたわかめうどんのあったかい香りに少し元気になる。


 ——玲鷗れおんとハワイの食堂にいるけど来る?


 そうちゃんからホログラム通信が入る。


 ——大丈夫、ジュンもいたから。


 ——OK.近いうちクラスの人と外行くのもいいよね。また今度!


 アタシは淡々とわかめうどんを啜った。


 お出汁の味が、ほっこり、美味しくて少し元気になった。


「なんか、暗い顔……」


幸子さちこ……」


「もー!!!探したんだよ!!!」


 幸子さちこは空色のソファーの上にデン!と座り、アタシのテーブルに色とりどりのドーナツを置いた。


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