薄明のハイドロレイダー

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　温かいまどろみと、沢山の学び

　楽しくも辛く、けれど幻想（ゆめ）のような日々……

　忘れられない痛み

　消えゆく悲しみ

　悔しくも嬉しい

　夢の星の輝き……ラララ……

　母たちを会場に見送って校舎に入ると、何度も歌った卒業式でクラスの皆んなと歌う歌が、頭の中を廻（めぐ）る。

　ショーコも同じだったみたいで、ハミングが重なって笑った。

　いつも無造作に取り替える上履きも、今日は丁寧に履き替える。

　これが最後と思うと、スッとするような寂しさがある。

「わ、入んない」

　すらっとしたショーコにぴったりな深緑のブーティは、小学校の下駄箱には入らなかった。

　アタシの銀のパンプスの上にはスペースがあったので片方入れてやることにする。

「ありがと、ほっしー」

「いえいえ」

　卒業式、アタシたちの入場は最後。

　全校生徒、保護者、来賓が揃うまで、最後の教室を楽しむのだ。

　あ、アタシは長く休んじゃったから、サイン帳を書いてもらわないと。

　ゆっくりゆっくり、階段を上がる。

　教室から、みんなの声が聞こえる気がする。

　踊り場の窓が開放されていて、階段を登る背中が心地良く押される。

「わ！」

　息もできないような、春の風。

「ほっしー！」

　手を掴む。

「あ、ありがと、ショーコ」

「いえいえ」

　春の残り香が爽やかで、寂しい。