170

「……間に合うの!?」


 サブローは応えない。


「ミカ!!!」


「行くしかないじゃん!!!」


 アタシは宙に浮かぶボロボロの階段に飛びついた。


「くっ!」


「あ、危ないよ!!ミカ!!!」


「援護して!幸子さちこ!!わっ」


「ミカ!!落ちる!真紅のコランダム爆炎ブレイズ!!!」


 アタシのすぐ背中に迫っていたディストレスが消えた!


「アタシたちは……」


 なんとか体勢を立て直し、すぐ上の階段の残骸に飛びつく。


「失うわけにいかないでしょ!友だちショーコを!!!」


 ムリでも!道が見えなくても!!!


「やだっ」


 猿たちディストレスの動きが速い!それを必死に振り切る!


 アタシは絶対に諦めない!!!



 ……急に……風が涼しく感じた。


 ジャケットを、引っかれたかもしれない。


 獣の金切り声が、いやに近くで聞こえるのに、耳の中で木霊こだまして、幻のようにも感じる。


「ミカぁぁあああああ!!!」


 幸子さちこの絶叫が聴こえる。


 ……いた



 ブワッ——!!!


 急に、天地が逆になる。


「えっ……落ち……て……——」


 桜色の紫が……


「キモ……」


あね!!!」


ったァ!!!!」


 柔らかいモノに包まれながら、アタシは石の踊り場まで転がり落ちた!!


「僕が……」


 背中と両手足がズキズキと痛んだけれど……


「僕が覚えてるから!!!」


 抱えられた体が、暖かかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る