156.5 宵闇のショコラ……——遠い夢の中へ
六畳と四畳半の小さな控え室には、二つのちゃぶ台と灰色の猫がいた。
猫は
サッシの外を見ると、灰色の夜空。
星の見えないこの夜が、
「ここは……新宿か?」
「そうだよジュン君、お茶淹れるから座って座って!」
シュウジが忙しなく動き回る。
「まぁ、似せた地下基地の一画だけどね。はい座布団」
既に寛いでいるほっしーから座布団を受け取り、ちゃぶ台を囲む。
TVや古代の漫画でしか見たことのない和室に、心が和むことに気がついた。
「あ、ジュン、チョコ食べる?」
「二月だし、バレンタインチョコってやつか?」
「作ったのシュウジと
我は恐る恐る手を伸ばしたが、久しぶりにチョコなんて食べて、少し苦くて、甘かった。
「はい、ジュン君!あったかいお茶と合いますよ!」
人が淹れたお茶も、久しぶりだ。
「え……誰?この長髪男子君」
入口を見上げる。
ミルクティー色のツインテールにベージュのパーカーのとんでもない美少女。
「あ、
「ハ、
度肝を抜かれるくらいのキラキラなオーラ……。
「……
「
「え……シュウジ君のチョコ!?☆」
光が弾ける……!
「もちろんいただくよ☆☆☆」
……可愛くなど……無い!!!
「お疲れー!!!」
ここは楽屋であると言わんばかりに、
いや、こんなに近くに座られると無理なんだが!?
「お疲れさんっ」
……
というかいつの間にかここに居るサングラスの男は誰だ?
「シュウジ、チョコにはホットミルクもいいだろ。温めて来たからさ」
緋色装備を万全にした
「ジュン君、初めまして。私はミカ……ほっしーとシュウジの母です。カップの色、これでいいかな?」
テニスが得意そうな爽やか笑顔のご婦人が我に虹色のマグカップを差し出す。
お母さんがここに、何故だ?
……
「お疲れ様〜、あら
チョコレートの甘苦い風味が、ホットミルクに溶けていく夜。
シュウジの底抜けな笑顔も、
「なんかさ、楽しいね?」
ほっしーが呆れたように、楽しそうに笑っていた。
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