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「
我は、この男を知っていた。
いや、この島国で、
天才中学生、未来科学研究者の息子——悲劇の貴公子。
こんなやつが、我と似てるはず無かった。
オムニバスシネマの
「恨んだよ、俺も」
流れる涙を気にもせずに、
「独りにされて……狂ったっていい。寝たきりだっていい。……一緒に暮らしたかった。俺を愛してたのなら何故……」
何故、父は山に消えたのか。
何故母は俺を見ない?
愛していたのなら……
「自分だけが……辛いなんて思うなよ」
確かにそうかもしれない。
我よりも辛い人間なんて、きっと沢山いる。
理不尽な力に愛する家族を失って、
「お前が……」
静かに涙を流す黒い瞳を見上げる。
「俺の辛さを
「……確かにね。……でも」
黒い瞳が真っ直ぐに俺を見つめる。
月の光、神々しさを纏って。
「楽しかっただろ?辛いけど、寂しくて……死にそうになるけど……」
自分の涙で
歪なその姿は、鏡のようだった。
「生きてみないか?
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