　記憶星——。

　周囲のAIから記憶読み取り、記憶された記録装置……。故人との思い出が深ければ、電子信号が反応してより鮮明な映像となり、思い出が無ければ、オムニバスシネマのような映像となる。

「仲、良かったんだな、この子と」

「……良くない！」

　IＯPに旅行に出かけた渡辺（わたなべ）は、これっぽっちも我を思い出さなかったろう。

「こっちが特別だって思ってたって……あ、相手もそうとは限らない！……母親ですら……」

　母さんは我を見ない……。

　いつまでも家族より夢を選んだ父の幻影を追って。

「君は嫌になるくらい俺に似ているよ」

　いつの間に横に居た緋色の男は、我にコートをかけた。

「2月はまだ……寒いからね」

　我が羽織ると引きずってしまうコート。

　（泣いて……いるのか？）

　体が冷えていたことにも、止めどなく頬を伝うものにも、今、気づく。

　学生服姿の男は空を見上げ、儚く、幼く見えた。

「……行く筈だった高校の制服だ。似合うだろ？」

　我はどこかで、この男を見たことがあった。

　二つの記憶星が、男の周りを飛び交い、男の黒い瞳から美しい涙が流れた。

「君も視るといい。人類の希望について、懸命に探求した研究者の碑だ」

　雨沢光一郎（あまさわこういちろう）——。

　雨沢三智子（あまさわみちこ）――。

　そして。

「雨沢（あまさわ）……宗一郎（そういちろう）…………」

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