白日のショコラ……——昇れ、きりなしの悪夢

145

 水素球ハイドロバレット発射装置ランチャーの銃身の輝きが、銃口に移った瞬間、金色の光が拡散する。


 白い光の弾丸——彗星の輝きが、1ミリもブレることなく、対象ディストレスを貫いて弾けた。


 マッターホルンの麓の高原に根付いた、巨大なエーデルワイスディストレスは、彗星が衝突した衝撃でチリとなり消えた。


「やったぁ!!!」


 星ヶ咲ほしがさき萩爾しゅうじが叫ぶ。


「当たると……思わなかった……」


 ほっしーが震えていた。


 こんな風に、安全に駆除出来るならば……未来への希望を感じた。


 エネルギーを高める瞬間、リリースの瞬間——……シュウジとほっしーの確かな息遣いを感じた。


「凄いよ!ジュン君!!!」


 シュウジとほっしーが、まるで仲間を見つめる瞳で、こちらを見ている。


 気持ちが高揚する。


「良くやった……」


 スピーカーから、緋色の男の声が聴こえる。


「やったわね!♤」

「ジュン君、ファーストミッション完了よ」


 アフロディーテ、我がアテナu-coユーコから激励の通信が入り込む。


 美しい連峰に、茜色の夕陽が落ちていく。


 涙が出るくらいの……いつぶりかの壮絶な達成感と……同じくらいの痛み——……。


 許されない……こんな気持ち……。


 吐き気と重苦しさに襲われる。


 自罰心が、己が拳を傷つけ、手の平に血が滲む……


「何だよ……これ……悪夢みたいだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る