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「か……」


 星ヶ咲ほしがさき萩爾しゅうじが、モニターのワイプに映るハイドロレイダーじぶんの姿を見て震えている。


「っこいい!!!」


「シュウジ、不謹慎って言葉をさ……」


「分かってマスヨ、お姉サマ。僕は家族のため、世界のためにレイダーに乗ってイマスヨ」


 馬鹿馬鹿しい。


 緋色の男に言われたから……力に抗う労力コスパを冷静に考えて、ただ乗っているだけだ。


 だが、このコックピットも、HyLA特務機関のジャケットも、悪くは無かった。


 メディアで多く映るハイドロレイダーはカーキ一色だが、ホワイトがベースの機体、真っ白な水素球ハイドロバレット発射装置ランチャー、三日月のような翡翠ヒスイ鍬形くわがた翡翠ヒスイ籠手ガントレット


 月のように輝く瞳。


 心が熱くなって来る。


 対象は、肉眼でギリギリ捉えられる遥か彼方。


 この射程も、当てたらアツい。


「開花はずっと先だ。落ち着いて狙って」


 緋色の男の声が響く。


 モニターの照準器が、ディストレスエーデルワイスを捉えようとしている。


 白い……巨大な蕾。


 シュウジが合図を出す。


「「「薄明はくめいの光が、彗星すいせいとなる」」」


 光が、発射装置ランチャーに集まっていく。


「「俺の力を光に変えて」」

「私の力を光に変えて」


「「「貫け」」」


 心が……


「「「ディストレス!!!」」」


 ……静かだ。


「「「ハイドロバレット」」」


 これは……


「「「メテオ!!!」」」


 新しい絶望じごくだ。

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