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「わたな……ほっ……しー」


 久々に他人たにんに呼びかける。

 少し掠れたが、上手くいった。


 わけのわからないままに、何かの準備が始まっている。授業中に、こうやってよく、渡辺わたなべとやりとりをした。


「何?」


 ほっしーは、銀色のソファーに座っている。それも中々いいじゃないか。


「今から何が始まるんだ?何も聞いてないんだが」


「あぁ……そうちゃんは外面は凄く良いけど、身内にはちょっと変だから。たぶん、ジュンのこと仲間って思ってるからかと」


「ん!?意図しない返答が……」


「まぁこの後、雪子せつこさんが来るから」


 雪子せつこって鑑原かがみばら雪子せつこか?


 確かに、鑑原かがみばら雪子せつこHyLAハイラの協力者として、搭乗もしていると世間でも有名だし、u-coユーコの講義で、他国への講和、搭乗者パイロット育成にも関与していると聞いた。


 我が何者になるのかは、一切聞いていないが、察するに我はきっと……。


 トレーニングルームの一角が、ワープの影響を受けて七色に光る。


 強く気高きアフロディーテ。鑑原かがみばら雪子せつこ


「こんにちは、相良さがら純之助じゅんのすけ君。あなたは今日から乗るのよ、このハイドロレイダーに♤」


 u-coユーコを見る。


 我の女神はその美しき指で、目の前に展開されたモニターを指し示した。


 忌まわしき復讐の対象。


 講義で得た知識が目の前に展開していた。

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