新しい世界……——新春の軌跡

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「……ねむい」


 バターン!とアタシは畳に倒れ込んだ。


 ニャッニャッとかえでがアタシの足先をちょいちょいとパンチする。


「かわい」


 ごろんと仰向けになると、かえでがお腹に登ってくる。


 かえでのお腹が上下するのが、あったかくて疲れが取れる。


 昨日も今日も、アタシは学校に行った。


 始業式にも出たかったし、最近はほとんどのコが休まず学校に来てる。


 レイダーのおかげっていうのもあるのかも。って思うと、少しは役に立ってるのかも。って思って、陰ながら、クラスメイトの笑顔や馬鹿話にほっとする。


 とはいえ、神龍しんりゅう討伐後の始業式、紅梅氷の切削後の小テスト後のミーティング。


 パチッ、とTVのリモコンを点けると、さっきまでトレーニングルームで一緒にミーティングに出てたはずの幸子さちこが笑顔で、新曲のc'mon new world!を歌って踊ってる。


「あー……ええ曲や」


 アイドル、すごっ!


「アタシには、限界やで……」


 世の中には、アタシより忙しい人はごまんといる。


 だけど、かえでしかいないこの和室へやで、声に出して吐き出すと、ちょっと元気が出る気がした。


 無理なもんは無理!


 でも、なんとか畳に辿り着けたアタシは偉いと思う。


 だって新年だし、学校にも行きたい気持ちだった。みんな何してるか、気になるし。

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