78

「よ、しっと」


 アタシはホロカレンダーのカウンターを一年後にセットし直した。


「この日に、また帰ってくるからね」


 正直、休みが取れるかはわからない。


 働いて、働いて、働いて。


 本当は、サブローともっと過ごしたいし、結婚とかもしたい。


 でも、アタシじゃなきゃ出来ない仕事もあると思いたい。


 それに……人が足りないっっ!!!


 終わりのないこの辛くも少しは幸せな日々がいつまで続くのか、わからなくなる時がある。だけど、願うだけなら。


「ぜったい、来年はクリスマスしよう」


 それが、口約束だったとしても、ハジメもサブローも嬉しそうに笑ってくれた。


仁花にかの彼氏も連れて来てよ。IOPに行くんだから、出会いあるって!」


「はぁ!?……ば、ばかじゃないの!?ま、まぁ!?このアタシの可愛さを持ってすれば、彼氏の一人や二人っ!?」


「……本当に、いつ結婚行ってもいいんだから」


 ウィスキーの水割りを飲み始めたハジメが、据わった目で語る。


 兄弟三人で生きてきた。必死だった。けど……


「うん。今までありがと、仁花にか。……ハジメ兄もっ!」


 サブローは、アタシにターコイズのネックレスと、ハジメ兄に同じ色の栞を差し出した。


「まぁ向こうに行っても暇なんかないかもしれないけどさ」




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る